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【熟女体験談】突然の海外赴任 その2

kage

2014/09/27 (Sat)

昼食に親子丼をとったのですが、妻は箸もつけません。
「どうした?食べろ。」

「典子さんに会うのだけは許して下さい。典子さんには会えないです。」

「子供みたいな事を言うな。
離婚を前提の別居か何か知らないが、今はまだ夫婦だ。
頭の一つも下げられないのか?
もういい、その話は後だ。
折角俺が注文してやった物を食べない積もりか?」
妻は一口食べましたが、また箸を置いてしまいました。 「どうして食べない?
奴の言う事は何でも聞いて、あんな卑猥なパンティーまで穿いていたおまえが、俺の言う事は、おまえの身体を心配して言っている事すら聞こうとしない。
本当なら、俺は稲垣や奥さんに会いたくなければ会わなくても良い立場だ。
それを一緒に居てやろうと思っているのに。
もう分かった。俺は出掛けるから3人で話し合え。」

すると妻は、口いっぱいに頬張り、お茶で流し込む事を繰り返し、時々吐きそうになっています。
「そうだ。残さず全て食べろ。」
空腹も辛いのですが、食欲も無いのに無理やり食べさせられるのも同じ位辛く、一種の拷問ともとれます。
妻を言葉で虐めるだけで無く、身体への虐めを始めた自分が恐ろしくなりました。

夜になって稲垣から電話がかかり、既に途中まで来ていたのか、それから10分ほどで来た奥さんは、小柄で可愛い感じの方なのですが、ここに来る途中も泣いていたのか、目の回りの化粧が落ちていて、折角の可愛い顔が台無しです。

私が妻の待つ座敷に案内すると、部屋の隅でうな垂れて正座している妻を見つけて駆け寄り、前に座って妻の両肩を掴んで揺すり、
「どうして?どうして智子さんなの?どうして?」
「ごめんなさい。ごめんなさい。」

私があえて止めずにいると稲垣が、
「もう、そのぐらいにしておけ。悪いのは俺だ。」

別居の原因が奥さんの浮気では無いと確信していた私は、私と同じぐらい辛いで有ろう奥さんに対しての、横柄な口の利き方に怒りを覚え、
「悪いのは俺だ?何を格好つけているんだ?まだ女房の気を引きたくて、いい男を演じているのか?

悪いのはおまえだと認めているのなら、おまえ一人で全ての責任を、今すぐにとってもらおうじゃないか。」

「どの様に責任をとらせていただけば良いですか?」

「馬鹿か?責任のとり方も分からないで、偉そうに言うな。泥棒が捕まってから、泥棒は俺だと威張っているのと何も変わらないぞ。」

「すみません。威張っていた訳では。」

「今日はどの様に責任をとって、どの様に償うのか考えて来ただろうな?」

「ご主人の気が済む様に、出来る限りの事は致しますので、どうかご提案頂けないでしょうか?」

「俺に言わせてもいいのか?出来る限りの事をしてくれるのか?
それなら、おまえが何度も何度も汚した女房の身体を、以前のきれいな身体に戻してくれ。
俺の壊れた家庭を元に戻せ。
俺は一生この事を忘れずに、苦しんで生きなければならない。
そんな人生は嫌だから、俺からこの記憶を消してくれ。
時間を単身赴任の前に戻してくれ。」

その時、稲垣の奥さんは声を出して泣き崩れ、妻は私の前に来て畳に額を擦り付けながら、
「あなた、ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」
しかし私は、そんな妻を無視して、
「おい、何とか言えよ。おれの希望を出来る限り叶えてくれるのだろ?」

「出来ません。どれも出来ないです。どうか私に出来る事にして下さい。お願いします。」

「そうか。それなら現実に出来る事を頼もう。
去勢してくれ。いや、全て取ってしまって、性転換してくれ。
そうすれば過去は消せなくても、今後は少し安心出来るかも知れない。
どうせこの様な事が平気で出来る2人だから、今も謝りながら腹の中では舌を出しているのだろ?
これからも目を盗んで会うのだろ?
おまえが女になれば少しは安心出来る。これなら現実に出来る事だ。」

無理を言っているのは分かっていまが、これは私の本心なのです。

稲垣も妻と同じ様に額を畳につけて、
「すみません。私には出来ません。」

「努力するから何でも言ってくれと言いながら、何もしてくれないのだな。
俺にこれだけの苦しみを与えておきながら、銀行には知られたくない。
性転換も嫌だ。おまえは本当に償う気は有るのか?
おまえは何も失わないじゃないか。」

すると妻が話しに割り込んできて、
「私が悪かったです。あなたを裏切ったのは私です。あなたには私が償います。どの様な償いでもします。あなたの言う事なら何でもします。」
妻の稲垣を庇う様な言葉で更に頭に血が上り、ネクタイを持って来ると妻に投げつけて、
「それなら死んでくれ。おまえと結婚した事が人生最大の汚点だった。
今からでは人生のやり直しは出来ないかも知れないが、過去の汚点だけは消し去りたい。
それで首を吊って死んでくれ。
ただし、おまえの遺体なんて引き取りたくは無いから、誰にも見つからない様な所で死んでくれよ。」

妻は、体に当たってから目の前に落ちたネクタイを見詰めたまま動きません。

「何処で死のうか考えているのか?そうか、俺が無神経だった。
俺が身に着けていた様な物で死にたくないか。
死ぬときぐらいは、愛する人の物で死にたいよな。
稲垣、おまえのベルトを渡してやってくれ。」

それを聞いた妻は、ネクタイを力一杯掴んだのですが、やはり動こうとはしませんでした。

「間違っても車に飛び込む様な真似はするなよ。おまえの様な人の心も持たない人間の為に、見ず知らずの人に迷惑を掛けるなよ。」

当然、妻は出来ないと言ってすぐに許しを請いながら、泣き崩れると思っていたのですが、妻はそのままの状態で動かず、涙は流していても泣き崩れる事も無かったので、私の目論見は狂い、思惑通りに事が進まないことにも腹が立ちました。

何度謝らせても私の心が晴れる事はないのですが、それでも常に謝罪の言葉を聞いていないと不安なのです。
私が次に思いついたのは娘の事でした。

「理香の事は心配するな。おまえの様な女にならない様に、俺がしっかりと育てる。」
すると妻は顔を上げて、縋る様な目で私を見詰め、
「ごめんなさい、出来ません。私には出来ません。
理香を残して死ぬなんて出来ません。
死ねばあなたの顔も見られなくなってしまう。
許してください。他の事なら何でもします。」

「理香?今頃何を言っているのだ?
今迄散々理香を放りっぱなしで、こいつに抱かれて喜んでいたおまえが、理香を残して死ねない?
そんな物ただの言い訳だ。自分が死にたくないだけだ。
それに、あなたの顔が見られなくなる?
それも言うならこいつの顔だろ?
言い間違えたのか?それともお得意のご機嫌取りか?
あなたの言う事なら何でもすると言いながら、死んでくれと言えば死ねないと言う。
本当にお前の言う事はその場凌ぎの嘘ばかりだな。」

その時稲垣が妻に助け舟を出し、
「お願いします。死ねなんて言わないで下さい。お願いします。」

「またまた色男のご登場か?何を偉そうに言わないでくれだ。
それならおまえが代わりに死ねるのか?
死ぬどころか、ちょん切る事すら出来ない奴が格好ばかりつけるな。」

その時、奥さんが一際大きな声で泣き出したので、怖い思いをさせて奥さんまで苦しめていると知り、
「奥さん、すみません。
折角来て頂いたのに、俺の怒りばかりぶつけてしまって。
でも奥さんもこれを見れば、私の怒りを少しは分かって頂けると思います。
おい、死ぬのは許してやるから、奥さんの前に立ってスカートを捲ってみろ。」

妻は、奥さんの近くまでは行ったのですが、その様な事が出切る筈も無く、ただ立ち尽くしています。

「何でもするからと言うので、死んで詫びろと言えばそれは出来ないと言う。
スカートを上げて、お前達のしていた恥ずかしい行為を見てもらえと言っても、それも出来ない。
何でもすると言うのは、いったい何をしてくれると言うのだ?
これも嘘、あれも嘘、嘘、嘘、嘘、おまえが俺に言った事で、本当の事は何も無い。」

すると妻は顔を横に向けて目を閉じ、スカートの裾を持ってゆっくりと上げ始めました。

「もっと上げろ。パンティーが完全に出てしまうまで上げろ。」

私が後ろからパンティーを一気に下ろすと、俯いていた奥さんは顔を上げ、
「智子さん、これは?」
そう言ってから目を逸らすように、また俯いてしまいました。

「稲垣、おまえがやったのだな?おまえが剃ったのだな?」

「・・・・はい・・・・すみませんでした。」

「智子。確かこれは水着を着る為に、自分で剃ったと言っていなかったか?
おまえの人生は嘘ばかりか?
どうせ俺と結婚したのも嘘だったのだろ?
好きでも無いのに嘘で結婚したのか?」

「違います。」

「何が違う?本当は俺と付き合う前、こいつの所に泊まった時から関係が有って、それからも、
ずっと続いていたのではないのか?俺はもう何も信じられなくなった。」
私の言った事が当たっているとすれば、結婚してからも妻にはもう一つの顔が有り、私に見せていた顔が妻の全てだと、ずっと思っていた私は間抜けな道化師だった事になります。

私が話し終わると、ずっと泣いていた奥さんが妻の前に座り、
「智子さん、本当なの?私はずっと気になっていました。
あの時、主人が、昨日は夜遅かったので一晩泊めたと自分から話してくれて堂々としていたし、あなたにも悪びれた様子は無かったので、主人を信じよう、智子さんを信じようと思ったけれど、ずっと私は気になっていた。
あの時からの関係なのですか?
もしもそうなら、私の人生は何だったのだろう。」

「ごめんなさい。典子さん、ごめんなさい。でもあの時は、典子さんを裏切る様な事はしませんでした。それだけは信じて。」

「裏切る様な事はしなかった?
奥さん、こいつらの感覚では、キスはしたがそれは裏切では無いそうだ。
一晩中ベッドに寝て抱き合っていたけれども、裏切った気持ちは無いそうだ。
それに、健康な男と女が狭いベッドで抱き合ってキスしていても、他には何も無かったそうだ。」

奥さんは、また妻の両肩を掴んで揺すりながら、
「嘘だと言って。智子さん、キスもしなかったと言って。
抱き合っていたなんて嘘だと言って。
そうでなければ、あの日からの私の人生全てが無駄に思えてしまう。」

奥さんは紙に包まれた何かを出すと、何も答えずに泣いている妻の目の前で開き、

「これは智子さんの物なの?それだけでも教えて。お願いだからこれを見て。」

妻は一瞬見たものの、すぐに顔を背けて黙っていたので、私が近くに行って見せてもらうと、それは米粒2つ分ほどの、蝶の形をした小さな金属でした。
これは私が3回目の結婚記念日にプレゼントした、イヤリングの先の花の中心に付いていた物です。
妻は、可愛いと言ってよくつけてくれたのですが、片方の蝶を何処かに落として来てしまったので、なんとか修理出来ないか購入店に持って行った覚えが有ります。

「これは妻のイヤリングの先に付いていた物です。これを何処で?」

「バスルームの脱衣場です。
9年前に私の親戚で不幸が有った時に、子供を連れて泊まりで実家に行っていたのですが、帰った日の夜お風呂に入ろうとした時に、脱衣場の隅に光る物を見つけました。
手に取ると蝶の形をしていたので、最初は、子供の玩具の何かかとも思いましたが、玩具でこの様な物が付いている物に心当たりがなく、これは何かアクセサリーの一部だと思いました。
そう思うと悪い方にしか考えは行かずに、ずっと主人に問いただそうと思って大事に持っていたのですが、結局、主人の答えを聞くのが怖くて9年間も聞けずにいました。」

奥さんは今まで稲垣に言えなかった胸の内を、熱く話し出しました。

「私はずっと自分に自信が無かった。
付き合っている頃から、主人が智子さんの話をする度に、心配で仕方がなかった。
智子さんから電話が掛かってきた時や、3人で食事に行った時に、私には見せた事の無い様な主人の笑顔を見る度に、不安で仕方がなかった。
私は可愛くも無いし、プロポーションだって智子さんみたいに良くないし、学校だって高校しか出ていない。
私なんかと、どうして付き合ってくれているのか不思議だった。
どうして一流大学を出たエリートの主人が、私なんかと結婚してくれたのか不思議だった。
一晩一緒にいたと言われた時から、ずっと智子さんの影に脅えていた様な気がします。
でも、主人が私の事をどう思っていようとも、私が主人を愛しているのに変わりは無いのだから、例え主人が私を愛してくれていなかったとしても、一緒に居られればそれでいいと、自分を納得させていました。
主人に何度か女の影を感じた時も、相手が智子さんで無ければ、ただの遊びだから我慢しようと思ってきました。
でも、智子さんだけは、嫌だった。主人や2人の子供達との、幸せな生活を壊される気がして怖かった。」

「典子、そんな事を思いながら・・・・・・・・すまん、許してくれ。」

その時、稲垣は、私の前で初めて涙を見せました。
奥さんは私と違い、ずっと疑っては信じ、信じては疑って長い間苦しんで来たのかも知れません。
私は奥さんの話を聞きながら、9年前を思い出していました。
9年前といえば娘が生まれる前の年で、子供が出来ないで悩んでいた時期です。

私と酷く言い争った翌日の夕方に、妻が会社に電話をかけて来て、少し冷静になりたいので、家に戻らずに銀行から直接友達の家に行って愚痴を聞いてもらうので、帰りが遅くなるのから外で食事を済ませて来て欲しいと言われた事が有りました。

私も言い過ぎたと反省していて、次の日が休日だった事も有り、一つ返事で快く承諾したのですが、妻は11時を過ぎても帰って来ず、よく考えると妻にその様な事を話せる友人がいる事も知らなかった上に、当時は携帯も持っておらず連絡の取り様が無かったので、何処に行ってしまったのか心配で、ずっと寝ずに帰りを待っていました。

結局朝になっても帰って来ずに、私はいつしか眠ってしまいましたが、昼前に目覚めると妻は隣で眠っていて、その後も夕方まで死んだ様に眠り続け、目覚めてから何処に行っていたのか聞くと、友達の家で朝まで悩みを聞いてもらっていたと言いましたが、
今にして思えばその友達とは、稲垣の事で、その時の様子だと、一睡もせずに朝まで愛を確かめ合っていたのだと思います。
悪い事は出来ないもので、おそらく脱衣場でイヤリングを外した時に落としてしまい、これから稲垣と一つになれる事に興奮していたのか、蝶が取れてしまった事にも気付かずにいたのでしょう。

「智子、何か言ったらどうだ?イヤリングを落として来た時も、関係をもったのだな?」

私が妻に問いただしても、妻は何も反論せずにただ泣いている事から、その時にも関係が有った事を確信しました。
何も答えない妻に代わって稲垣が口を開き、
「回数では無いかも知れませんが、その時一晩だけ関係を持ちました。
先に話していた、結婚前に私の所に泊まった時は、本当にキスだけです。
1年前からこの様な関係に成ってしまいましたが、それより前は、本当にその一晩だけです。
申し訳有りませんでした。典子、すまん。」

稲垣の顔付きや話し方から、この事は本当だと感じましたが、散々嘘をついてきた2人です。
まだ何か隠していそうで、全てを信じる事は出来ません。
何より、例え一晩だけだと言っても私を裏切っておきながら、その後何食わぬ顔で生活していた妻に対して、より強い怒りを覚えます。

私は妻と2人だけで話したくなり、
「今後の事ですが、多少でもお互いの夫婦がどうするのか決まっていなければ、話し合いも違って来ると思うのです。
来て頂いていて申し訳ないのですが、妻と2人だけで話してもいいですか?」

すると奥さんは頷いて、
「私も今、主人と2人で話し合いたいと思っていました。」
稲垣夫婦は、そのまま座敷に残り、私達は寝室に行き、
「ずっと俺を騙していたのだな。身体の関係はあの時だけかも知れないが、ずっと繋がっていたのだな?」

「繋がっていた?いえ、そうかも知れません。
結婚してから偶然同じ支店になるまでも、何度か電話で話したりしていました。
同じ支店になってからも、関係を持ったのは1晩だけですが、2人だけで食事に行った事も有ります。
理香が生まれてからは疎遠になって、連絡も取り合っていませんでしたが、支店長として彼が来た時、正直嬉しかったです。」

「あいつとはどの様な関係なんだ?お互い、そんなに好きなら、奴が婚約を破棄してでも結婚すれば良かったんだ。どうして俺と結婚した?」

「違うのです。彼とはその様な関係では有りません。
あなたを愛したから結婚したし、今でも愛しているのはあなただけです。
彼とは結婚したいとは思っていなかったし、ましてや抱かれたいなんて思った事は一度も有りません。」

私には妻が理解出来ません。

「それならどうして抱かれた?レイプされたのか?今回もずっと脅されていたのか?」

「違います。彼はその様な事はしません。」

「それなら聞くが、抱かれて感じなかったのか?気持ち良くならなかったのか?」

「行為中は興奮もしたし、気持ち良くもなっていました。
抱かれていて凄く感じてしまいました。
ごめんなさい。でも、彼とセックスしたいなんて思った事は有りません。」

聞けば聞くほど、迷路の奥深く迷い込んで行く様な感覚です。
私は、妻の言葉を何とか理解しようとしましたが、やはり訳が分からずに黙っていると、暫らく沈黙が続いた後、

「彼の言う事に間違いは無いと思っていたし、彼の言う通りにしていれば、私は幸せになれると信じていました。でも、愛しているのはあなただけです。」
その後も、妻の涙ながらに話す稲垣に対する思いを聞いていて、私にも少しだけ分かった事が有ります。
妻は、父親に裏切られ、その後も男の嫌な面ばかり見せられて男性不信になりました。
その後、母親や姉にも裏切られた形になり、男性不信と言うよりは、人間不信に陥っていたのかも知れません。

信じられるのは自分自身だけになってしまい、猛烈な孤独感の中、気が付くと稲垣だけが、唯一身近に感じられる存在になっていたのでしょう。
まだ自分以外の人間を信じる事の出来る、心の拠り所になっていたのかも知れません。

妻が生まれて初めて接した、真剣に妻の事を思い考えてくれる、絶対に妻を裏切らない存在だと思ってしまったのでしょう。
鳥は、生まれて初めて見た動く物を、親だと思い込むと聞いた事が有ります。
それと同じ様に、稲垣は妻が接した初めての信頼出来る誠実な男で、それは次第に男女の枠を越えた、回りにいる人間とは全く違う、特別な存在だと潜在意識の中に刻み込んでしまったのかも知れません。

「上手く説明出来なくてごめんなさい。彼は違うのです。
父親とも違うし、兄とも違う。結婚をしたい相手でも無いし、恋人という存在でも無い。
そうかと言って友人とは全く違います。」

私が思うに、言い換えればそれら全てなのでしょう。
いいえ、神とまでは言いませんが、それらを越えた存在なのかも知れません。
もしも、そうだとすると、これは夫婦の愛情や絆を遥かに越えた感情だと思え、絶望的になってしまいました。

「終ったな。俺達は完全に終ってしまったな。いや、智子の中ではずっと前から終っていたのかも知れない。離婚しよう。」

「嫌です。離婚したく有りません。私はあなたを愛しています。
正直、彼に言われて数ヶ月前まで離婚を考えていました。
どの様にすればあなたを少しでも傷付けずに離婚出来るか考えていました。
あなたと別れて彼と再婚するには、どの様にすればよいのか真剣に考えていました。
彼は今でも、私と一緒になりたいと思ってくれていると思いますが、私はあなたと別れるなんて出来ないと気付きました。
自分の幸せを捨ててでも、私と理香の幸せを真剣に考えてくれている彼には言えずに、だらだらと関係を続けてしまいましたが、何が有ろうと私はあなたと別れる事など出来ないと知りました。どの様な形でもいい。あなたの側にいたい。
離婚なんて言わないで下さい。それだけは許して下さい。」

「だらだらと?もう無理をするな。
本当にそう思ったのなら、関係を切る事が出来たはずだ。
どの様な理由が有ろうとも関係を続けた。
いや、智子からは切れなかったのかも知れない。
それが全ての答えではないのか?」

泣きじゃくる妻に、
「明日、出て行ってくれ。これで終わりにしよう。理香は俺が育てる。」
妻は顔を上げると、私の目を見て必死の形相で、
「それは出来ません。理香をあなたに任せる事は出来ません。あなただけに負担を掛ける事は出来ません。」

「出来るさ。理香の事を負担だなどとは思わない。それに、おまえには任せられない。おまえは今まで理香の事など考えもせずに、奴に抱かれていただろ?」

「違うの。理香はあなたの子供ではないの。彼の子供なの。あっ・・・・・・・・・。」

私は自分の耳を疑うと同時に、目の前が真っ暗になり、思考回路は停止してしまった様です。

***

何処か遠い所で妻の声が聞こえます。
「あなた、ごめんなさい。あなた、ごめんなさい。」
その声は、徐々に近くなり、私を戻りたくない現実へと戻してしまいます。
現実に戻れば、悲しみから気が狂ってしまうのではないかと思っていた私は、現実に戻るのが怖かったのですが、人間の脳は上手く出来ているのかも知れません。
許容量以上の悲しみが急に襲って来た時には、心が壊れてしまわない様にそれらの全てを受け付けない様にして、守ってくれているのかと思えるほど冷静な私がいました。
きっと後になってから、今以上の悲しみが襲って来るのでしょうが。

「以前から分かっていたのか?」
妻は、流石にもう離婚を覚悟したのか、泣いてはいても、割とはっきりとした口調で、
「いいえ、考えた事も有りませんでした。彼から聞くまでは・・・・・・。」

「奴から聞いたのはいつだ?どうして奴に分かる?」

「彼が支店長として赴任してきて、4ヵ月ほど経った頃です。」
妻の話によると、稲垣のアパートで私と妻の血液型、娘の血液型を聞かれたそうです。血液型で性格判断でもするのかと思い、私と妻がA型で、娘がO型だと答えると、
「やはりそうか。」
妻が、何がやはりそうなのか聞くと、稲垣は立ち上がって窓から外を見ながら、

「お互いA型の夫婦からは、A型の子供かO型の子供しか生まれない。
稀にそうでは無い子供が生まれるケースも有るらしいが、そんな確率はごく僅かで無いに等しい。
またA型同士の夫婦からはA型の子供が生まれる確率が高いらしいが、理香ちゃんの血液型はO型。俺もO型だ。」

妻には稲垣の言っている意味が分かり、
「そんな事は有りません。確率はそうかも知れないけれど、理香は主人の子供です。」

「どうして分かる?DNA検査でもしたのか?智子は理香ちゃんが生まれてからも、2人目が欲しくて避妊をした事が無いだろ?
しかし子供は出来ない。その前だって5年も出来なかった。
結局、十数年避妊しないでセックスしていて、出来たのは理香ちゃん1人だけだ。
その理香ちゃんが、宿った時期に私と関係をもっている。」

「でも・・・・あの時は、子供は出来ないと・・・・・・・・・・・。」

「私も最近までそう思い違いしていたが、よくよく思い出せば、出来ないのではなくて出来る可能性が低いというだけで、全く可能性が無い訳では無かった。
だからその前に1度・・・・・・・君にもそう説明した覚えが有る。」

妻が、その時期私とも関係をもっていたので、それだけでは決められないと言って食い下がると、
「私も智子も、不妊の原因は智子に有ると決め付けていたが、もしもご主人に原因が有ったとしたら?
何度も言うが、ずっと避妊せずにセックスしていても、理香ちゃん以外出来なかったじゃないか。」

妻は、信頼している稲垣の言葉に、次第にそうかも知れないと思う様になり、問題が大き過ぎて涙も出ずに、座り込んだまま立てなかったそうです。
それを聞いた私も、その確率が高いと思いました。

昔、子供を生めない嫁は、いらないと、一方的に離縁された時代も有ったそうですが、私もそこまで酷くは無いにしても、男の勝手な考えで、妻に原因が有ると思い込んでいた時期が有りました。
思い出せば、妻が一晩外泊した後、それまで妻から誘われた事は一度も無かったのに、妻は毎晩の様に求めて来た様な記憶が有ります。
その時は、無断外泊をした事で、私の機嫌をとっているのだろうと思ったのですが、今考えると、稲垣と関係をもってしまった罪悪感からしていたのか、または稲垣との間に子供が出来てしまった時の事を考えて、私の子供だと誤魔化す為に、セックスをせがんで来たのかとも思え、
「あいつとの子供が、出来てしまっても良い覚悟で抱かれたのか?それとも、あいつの子供が欲しくて抱かれたのか?」

「違います。あなたとの子供が欲しくて・・・・・・・・・・。」
私との子供が欲しくて稲垣に抱かれたとは、さっぱり意味が分かりません。

「理香の事は俺にとっては何よりも大切な事だ。俺と喧嘩して、あいつの所に行ったところから、詳しく聞かせてくれ。」
話している内に妻は、娘に会って帰って来た時の様な状態になっていて、淡々と詳しく話し出しました。

***

当時、妻は子供が出来ない事で、軽いノイローゼの様な状態になっていて、時々何もかもから逃げ出したい気持ちに襲われ、そのような時は、つい私に当たってしまっていたと言います。
しかし、私は情け無い事に、妻が多少辛そうだと思っていても、そこまで精神的に追い込まれていたとは気付かずに、妻が私に突っ掛かってくる事が不愉快で、つい言い争いになっていました。

「特にお義母さんから、子供はまだかと言われるのが辛かったです。
お義母さんは、私を実の娘の様に思っていてくれていて、悪気なんて無く、本当に心配してくれているのが分かっていただけに、余計辛かったです。
それと、単純に子供が欲しかったのも有りましたが、私は一人になるのが怖かったから、どうしてもあなたの子供が欲しかった。
あなたの子供を生んで、あなたとの絆をもっと強くしたかった。
そうなればお義母さんとも、血の繋がりは無くても子供を通して、もっと本当の親子の様になれると思った。」

「それなら尚更、どうして稲垣と関係を持つ事になったのかが理解出来ない。
本当に俺との絆を強くしたかったのなら、稲垣なんかに抱かれないだろ?
言っている事と、やった事は逆の事だろ?」

銀行は、昼の間も営業している為に交代で昼食をとるそうですが、私と言い争った翌日、偶然稲垣と昼休みが重なり、稲垣を見つけると隣に座って、子供が出来ない事で私との仲が、最近ギクシャクしていると話しました。
「今仕事の事で頭がいっぱいだから、一人にしてもらえないか?」

妻を女性として意識していた稲垣は、周囲の目が気になったのか、素っ気無く答えると席を立ってしまい、残された妻は落胆を隠せませんでした。
稲垣の態度でより落ち込んでしまい、今夜もまた何かで私と言い争いになってしまわないか心配になり、重い気持ちで銀行を出た時に稲垣が追い掛けて来て、今日はもう少しで帰れそうなので、喫茶店で待っていて欲しいと言われたそうです。
一度は素っ気無い態度をとられているだけに、やはり気に掛けてくれていたという喜びは大きく、私に電話をしてから喫茶店で待っていると、入って来た稲垣は座りもせずにレシートを掴んで言いました。
「ここではお客さんに会うかも知れないので、要らぬ誤解を受けても嫌だから、私のマンションへ行って話そう。」

妻は、稲垣の奥さんにも聞いて貰えると思い、稲垣に案内されて当時住んでいたマンションに行くとリビングに通され、ソファーに腰を下ろした時、初めて奥さんは実家に行っていて留守だと聞かされました。
疚しい関係では、無いにしても奥さんに悪い気がして、一度は帰ろうと思ったのですが、じっと見詰める稲垣の目と目が合った時に、この人なら助けてくれると思ってしまい、不妊で悩んでいる事を話し、どの様にしたら夫婦の仲が上手く行くのか相談すると、何も言わずにただ妻を見詰めていた稲垣が話し出した内容は、信じ難いものでした。

「このままでは、いずれご主人との仲が取り返しのつかないほど壊れてしまう。
全ての原因は子供が出来ないという事だけだ。それならば、子供が出切る様にすればいい。」

「それが出来ないから悩んでいます。お医者さんにも行きました。でも駄目なのです。」

「ご主人も行ったのか?医者は何と言っていた?」

「主人はいずれ行くと言っていて、まだ行ってくれませんが、私はホルモンのバランスが崩れていると言われたので、おそらく原因は私に有ると思います。」

「婦人科の医者をしている友人がいるのだが、智子さんの話を聞きながら彼が言っていた事を思い出していた。
彼が言うには、不妊の中にも色々有って、病的な物には医学的な治療が必要だが、
精神的なものも多く、その中には『慣れ』と言うのも結構有るそうだ。」

「慣れ?・・ですか?」

「ああ。動物には発情期が有って、その時に交尾をするのだが、子孫を残す目的だけで交尾をする彼らは、余程の事が無い限り、ほとんどが妊娠するそうだ。
そうでないと種族が絶えてしまう。
ところが人間には、その様な発情期は無くて年中発情している。
言い換えれば年中発情期だとも言える。
いつでも妊娠可能だ。
しかし、やはり人間も動物の中の一つにしか過ぎないので、体質によっては、本当の発情期にセックスしないと、ただの排卵日にしても妊娠し難い人が少なく無いらしい。」

「いつが発情期なのですか?」

「言い方が悪かったが、残念ながらどの季節が発情期だというものは無い。
身体が発情期の様な状態になっている時。
つまり、身体が発情している時が発情期だ。」

「では、いつ発情しているのですか?」

「新婚時代は、身体も昂っていて、多くの場合、その時期は発情期に当たるらしいのだが、その後は人それぞれなので、いつが発情期なのか、いつ発情しているのかは分からないらしい。
ただ問題なのが、その後、発情期が来なくなってしまう場合が有る。
身体が発情しなくなってしまう場合が有る。
興奮や快感は普通に有るので、勿論本人は気付いていないが、夫婦間でのセックスに慣れてしまい、身体が発情期にならないケースが結構有ると言っていた。
それが彼の言う『慣れ』による不妊症だそうだ。
そういう人の特徴は、1番にホルモンのバランスを崩してしまっている場合が多いと言っていた。
2番目が、絶えずイライラしてしまう。
本人は他の理由からイライラしていると思いがちだが、本能的に子孫を残そうとしているのに、身体がその状態にならない。
身体が発情しない事のズレから来るイライラらしい。
言い辛いのだが、今の智子さんは『慣れ』から来る不妊そのものだと思う。」

こんないい加減な話に、切羽詰っていた妻は真剣に耳を傾けました。

「どうすれば良いのですか?どうすれば正常になるのですか?」

「残念ながら発情を促す薬などは無いらしい。気持ちを興奮させる薬は有っても、気持ちの興奮と身体の発情とは全く異なるものらしい。」
妻は、稲垣の話にのめり込み、ずっと身を乗り出して聞き入っていましたが、治療法や薬も無いと聞き、気落ちして俯いてしまうと、その時を待っていたかの様に。

「ただ、方法が無い訳では無い。
他の牡と交尾をする。そうすれば、それから暫らくは発情期となる。
つまり、ご主人以外の男とセックスをすれば、その刺激で発情し、その後2、3ヶ月は身体が発情期に入る事が多いらしい。」

「でも、その様な事は聞いた事が有りません。」

一瞬、期待して顔を上げた妻でしたが、内容が内容だけにふて腐れた様にそう呟くと、
「私もそうだった。しかし彼が言うには、この様な事を発表してしまえば、不妊で悩んでいる人の浮気が増えてしまって世の中が乱れてしまうし、仮にご主人も納得してそうなった場合でも、その時は良くても、後々その事で夫婦仲が悪くなってしまう可能性が高いから発表は出来ないらしい。
自分の患者にも浮気を進める事になってしまうから、とても言えないと言っていた。
世間に発表出来ないのは倫理的な観点からだと思う。」

この話を事実だと思い込ませる為に、稲垣は必死になって話していましたが、妻は疑っているのではなくて、稲垣の話を信じていても、自分には出来ないと思っていたのでしょう。
「そう言われてみればニュースでも時々有るだろ?
男性関係の派手な女性に限ってすぐに妊娠してしまい、子供を産んで殺してしまったとか、捨ててしまったとか。
その様な女性は、それこそ絶えず発情期の状態になっていて、妊娠し易いのは事実らしい。」

何か良い方法が有るのかと、最初から興味深く聞き入っていた妻も稲垣の話が終わると、いくら子供が欲しくても、やはりその様な事は出来ないと思い、また、その様な事を出切る相手もいないので、期待が大きかっただけに落胆も大きく、溜息をつくと黙って俯いてしまいました。

この様な嘘を咄嗟に考える事が出切るほど頭の回転が速い稲垣には、妻の気持ちなど手にとる様に分かるのか。

「智子さんにその様な事が出来ないのはよく知っている。
でも、君がみすみす不幸になるのを見るのは忍びない。
思い切って言うが、私が相手をしても良いと思っている。
私もご主人や妻の事を考えれば、とても出来ないのだが、君が幸せになる為なら、どの様な罪でも甘んじて受ける。
私は一生罪悪感で苦しむかも知れないが、君がその分幸せに成ってくれれば、どの様な苦しみも甘んじて受ける。」

ただ妻を抱きたいだけの言葉が、妻には分かりません。
潜在意識の中に、稲垣の事を信頼出来る特別な人間だと刻み込まれてしまっている妻には、少し冷静になれば、誰にでも分かる事が分かりませんでした。

妻の話を聞きながら、もう結果の出ている過去の事なのに、そんな嘘に騙されるなと心の中で叫んでいました。
しかし、稲垣を信頼し切っていて、その上普通の精神状態では無かった妻は、まるでインチキ宗教の教祖に騙されて行く信者の様に、稲垣の言う事を疑いもせず。

「それでは稲垣さんに悪いです。私の為に、その様な事は頼めません。」

「いや、私はずっと君の事を妹の様に、娘の様に思っていた。
しかし、思っていただけで、何もしてあげられなかった。
君が苦しんでいた時も、話を聞いてやるだけで何も助けてはあげられなかった。」

「そんな事は無いです。沢山助けて頂きました。」

「そう言って貰えると嬉しいが、そうでは無い。
今まで助けて上げられなかった分、今回は何とか力になりたい。
私の様な男が相手でも良ければ、私はどの様な罰でも受ける。」

この時点では、妻はまだ少し躊躇していましたが、それは私への罪悪感からではなくて、自分の事で稲垣にも罪を負わせてしまうという、稲垣に対しての思いからでした。
妻の頭の中には、私との子供さえ出来れば、全ての問題は解決するという考え以外無く、喜ぶ私や私の母、私の父に囲まれて、赤ちゃんを抱いている自分の姿が、既に見えていたのかも知れません。
妻の頬を伝う一筋の涙を見た稲垣は、もう少しで妻は落ちると思った事でしょう。
実際、次の稲垣の話で、妻は私との破局の道を進んで行くのですから。

「今思ったのだが、こう考えたらどうだろう。
これはセックス等では無い、ただの治療だと。
実際、智子さんとセックスしたいと思った事は無い。
これは君に魅力が無いとかその様な問題では無くて、私にとってはその様な存在では無いという事だ。
君もそうだと思うが、セックスの対照では無くて、それとは違う大切な存在だ。
決して楽しんでセックスするのでは無いから、ご主人や妻を裏切る訳では無い。
楽しむどころか今そう考えただけでも胸が苦しい。
その様な気持ちでするのだから、決して裏切りなんかでは無い。
これは治療だ。そう考える様にしないか?」

稲垣を信用していて、その上ノイローゼ気味だった妻は、結局、何の疑いもせずに稲垣の提案に乗ってしまいました。
稲垣の欲望を満たす為の行為なのに、逆にお礼を言いながら。
稲垣は妻の話を聞いている内に、普通の精神状態で無い事にも気付き、妻を抱く為にこの様な嘘で妻を騙したのでしょう。

最初、本当にこの様な嘘に妻は騙されたのか?
この話は妻の作り話ではないかと思いましたが、話の内容は信じ難いものでも、妻の話している様子は嘘だとは思えないものでした。
妻の事を、私よりは遥かにしっかり者だと思っていて、家計は勿論の事、家の事はほとんど妻に任せ、安心して仕事に打ち込めました。
その妻がこんな事を信じ、騙されたのは、やはり信じ難い事でしたが、妻はそこまで精神的に弱っていたと言う事なのでしょうか?
それとも、私の言うしっかり者と、稲垣のような人間を信じてしまう事は、また別の事なのでしょうか?
よく考えれば、世間では多々有ることです。
病気を治す為に、高額なお布施を払う。
悩みを解決したいが為に、高額な壷を買う。

そんなニュースを聞く度に、そんな奴が本当にいるのかと思いましたが、本当に切羽詰った悩みが有る時に、実際、騙される人間は少なくないのでしょう。
心が弱っている人の、心の隙間に上手く入り込んでくる人間も少なくないのでしょう。
普通の精神状態の時には有り得ないと思う話でも、悩みを抱えていて心が弱っている時には、簡単に騙される事も有るのではないかと思うと、妻の話も有り得ない話では無いと思え、質問を続けました。

「それで、どの様なセックスをした?詳しく教えてくれ。」
私の知らない妻を知りたくて、必死の形相で聞きましたが。

「それは。・・・・・・。それは言えないです。許してください。」
最初から、すんなり話してくれるとは思っていませんでした。
聞けば怒りが増すことは分かっていて、何故この様な事を知りたいのか、自分でも分からないのですから。
逆に妻が話したくないのは、単に恥ずかしいだけなのか?
あるいは、私には言えない様な行為をしていたのか?
それとも、私に2人の愛を語り、これ以上私を怒らす事を得策では無いと思っているのか?
何より、妻と稲垣の2人だけの世界に、私に踏み込まれる事が嫌なのでは無いのかと考えると、余計に聞かずにはいられません。

何故だか分からない、知りたいという欲望を満たす為に、咄嗟に思い付いたもっともらしい話を妻にして納得させようとしてしまいます。
そういう所は、私も稲垣と同じなのかも知れません。
「いや、俺には知る権利が有る。
今まで実の子だと思って愛情を注いで来た理香が、どの様にして出来たのか知る権利が有る。
そうでなければ、これからも親としてやっていけない気がする。
何処でどの様にして出来た子かも分からず、血の繋がりも無い理香と、今迄通りにはやっていく自信が無い。
例え俺の子供ではなくても、どのようにして出来たのか知りたい。
その日あいつに抱かれたのは一度だけか?」

妻は、聞かれた事に正直に答え、私の欲求を満たせば、私が娘の事を今迄通り実の娘として接し、もしかすると離婚せずに3人で生活出来るかも知れないと勘違いしたのか、呟く様な小さな声で答え出し、
「いいえ、朝まで何度も。ごめんなさい。」

「どうしてだ?一度で充分だろ?上手い事を言っているが、おまえも抱かれたかっただけだろ。あいつとのセックスを楽しんでいただけだろ。」

流石に妻から進んで話せる事柄では無かったので、私の質問に答える形になってしまいましたが、事細かに答えさせたお蔭で大体の様子は分かりました。
妻は承諾したものの、いざとなるとまだ多少の躊躇いが有った為に、シャワーを浴びながら考えていると、妻が冷静に考える時間を与えたく無かったのか、突然稲垣が裸で入って来たそうです。
妻は恥ずかしさの余り、屈んで身体を隠して目を閉じました。
「恥ずかしがらないで身体をよく見せてくれ。私だって恥ずかしいんだ。
しかし、恥ずかしがっていては、普通の男女の関係と何ら変わりは無い。
これは治療だと言っただろ?そう思う事にしようと話し合っただろ?
医者の前で智子さんは、いや、智子は身体を隠すのか?
その方が逆にその事を意識している様で、恥ずかしいとは思わないか?」

稲垣の魔法に掛かっていた妻は、言われるままに少し足を開いた格好で立たされて、全てを稲垣の前に晒し、稲垣は手に石鹸を付けると、妻の豊満な乳房や秘所までも、愛撫するかの様に優しく洗い出しました。

次に稲垣は、これから治療に使われる、既に硬くそそり立っている物を妻の手で丹念に洗わせてから、口に含むように要求したのですが、流石に妻が拒んでいると、
「私も智子にこの様な行為をさせたくはないが、いくら医者の友人がこの時点では発情期に入っていないので妊娠の可能性は低いと言っていても、可能性が全く無い訳ではないだろうから少し心配だ。
私のが少しでも薄くなる様に、一度出しておきたいから協力して欲しい。」

「・・・・避妊具をつけてもらう訳には・・・・いかないのですか?」

「ああ、性器と性器が直に触れ合った方が、遥かにその効果は大きいらしいし、他の牡の精子の存在を身体の中に感じれば、なお効果が有ると聞いた。」
妻は、自分の為にしてくれている行為だと信じていたので、仁王立ちになっている稲垣の前に跪いて硬くなっている物を口に含み、ただ妻に色々な事をさせたいだけの要求だとは思わずに、この様な行為を長くさせたくないから、早く終る様に協力してくれと言う稲垣の言葉を信じて、言われるままに、口に含んだまま根元を手で擦ったり、二つの袋までおも口に含まされたりして、稲垣を喜ばせてしまいました。

稲垣が妻の口を弄ぶ行為は更に続き、フルートを吹くかの様に横から咥えさせたり、妻の後頭部を手で押さえて腰を突き出し、妻がむせ返るほど深く入れたりしていましたが、稲垣も限界が近くなったのか、
「出そうになって来たから、口に含んだまま頭を前後に動かしてくれ。もっと早く。よし、そのまま舌も使って。そうだ。手は下の袋を優しく撫でて。そうだ、上手いぞ。」
そうさせている内に終に限界を迎え、
「よし、もう出すぞ。もう舌を使うのはいいから、強く吸う様にして、前後の動きを早くしてくれ。もっと早く。もっとだ。もっと早く。よし、出すぞ。出すぞ。」
次の瞬間妻は、稲垣の濃い物を全て口で受けとめてしまいました。
「奴のを飲んだのか?」

「いいえ、むせてしまって吐き出しました。」

「むせていなければ飲んだという事か?」

「違います。」

最終的には、妻の全てを奪われると分かっていながら、まだこの様な小さな事に拘っている情け無い私なのです。

おそらく稲垣は、まだ子供が欲しい時期だったのか避妊具を持っておらず、
妻がシャワーを浴び出してからその事に気付き、
妻を妊娠させてしまわないか不安になったものの、買いに行っていては、
その間に妻の気持ちが変わってしまう可能性が有るので、先に一度出しておくという様な気休めをしたのでしょうが、
それと同時に妻を跪かせて思い通りに奉仕させる事で、男としての征服感を味わいたかったのだと思います。

妻は、相変わらず話したがらないのですが、それは無理も無い事だと分かっています。
仮に私が逆の立場なら、何処で会っていたかとか、会っていた回数などは話せても、どの様なセックスをしていたか等は話せないと思います。
特に相手を愛していて、それが2人の愛情表現なら尚更です。

しかし、私の知りたい欲求はまだまだ満たされずに、質問を続けずにはいられません。
妻の息遣い、喘ぎ声の1つまでも知りたくなってしまうのです。
他人から見れば未練がましい、悪趣味な事に思えるかも知れませんが、どの様に思われ様と知りたい願望が勝ってしまうのです。
質問されて、妻が言い辛そうに困った顔をすればするほど、尚更細かな事まで言わせたくなってしまうのです。
「それから寝室に行って、抱かれたのだな?どうした?答えろ。嘘をついても、後から奴に聞けば分かる事だ。」

「もう嘘をつきたくないから話せないのです。話せば話すほどあなたを傷つけ、あなたに嫌われてしまう。」

「もう充分傷付いている。理香が俺の子供では無いとまで言われたのだぞ。それ以上、何に傷付く?」

嫌うも嫌わないも妻との仲は、もうどうにもならないという言葉は飲み込みました。
「そのまま・・・・・・・バスルームで・・・・・・・・。」

稲垣が洗い場に、可愛いイラストが書かれた子供用のマットを敷いて、その上に胡坐を掻いて座り、妻は稲垣に跨る格好で抱き付く様に言われたので従うと、稲垣は妻からキスをするように強要し、長いキスが終ると今度は乳首に吸い付いてきました。
この格好では、稲垣の軟らかくなってしまった物が丁度妻の秘所に当たる為、徐々にまた硬さを
取り戻し、完全に硬くなると妻を下に降ろして、自分は後ろから抱きつく様な形で座り、妻の足
を立膝にさせて大きく開かせ、手は後ろに回させて硬くなった物を握らせました。

次に稲垣は、左手で妻の左右の乳房を交互に揉み、右手はクリや恥穴を虐めていたのですが、妻はどうしても快感と戦ってしまい、すぐには感じなかったと言います。

「智子、喜んでするのは裏切りになるとは言ったが、治療中は何もかも忘れて感じる事だけに集中しよう。
感じないと、この治療の意味が無い。
何もかも忘れて乱れないと、ホルモンの分泌も悪いままだ。
このままだと、裸でエッチな事をしただけになってしまう。それでいいのか?」

稲垣のこの言葉で、必死に快感を抑え込んでいた妻も堰を切った様に一気に感じ出し、狭いバス
ルームに響き渡る自分の恥ずかしい声で更に興奮は高まり、いつ気を遣ってしまってもおかしく無い状態になっていました。

妻は、稲垣に見られながら一人醜態を晒すのは恥ずかしく、そうかと言って稲垣の執拗な愛撫から、自ら逃げる事は出来ないぐらい感じてしまっていたので、それを避けたいが為に、稲垣の再び硬くなった物を、入れて欲しいと妻の口から要求してしまいました。

「そうか。もう欲しくなったか。それなら入れてあげるから、四つん這いになりなさい。」

「そんな格好は恥ずかしいから出来ません。後ろも見えてしまう。」

「それならこの狭いバスルームでは無理だ。他の場所に移動する事になるが、智子はそこまで我慢出来るのかな?ここをこうされても、我慢出来るのか?」

「いや?。もうそこは許してください。我慢出来なくなってしまいます。」

稲垣は、妻の気持ちなどお見通しで、
「我慢しなくてもいいぞ。私がよく見ていてあげるから、智子だけ逝きなさい。思い切り逝って、私に逝く時の顔を見せなさい。」
「そんな恥ずかしい事は嫌です。一緒に。私だけは嫌。お願い、一緒に。」

「なあ智子。感じていても、これは治療だと言っただろ?
智子はこれから赤ちゃんを産む身だ。
医者が、診察台に上がって足を開けと言っても拒むのか?
そんな事は恥ずかしいと言って拒むのか?それと同じ事だ。」

赤ちゃんと言う言葉で本来の目的を思い出した妻が、左手を後ろに回してお尻の穴を隠した格好で四つん這いになると、稲垣はすぐには入れずに、嬉しそうに硬くなった物をお尻や秘所に擦り付けて妻を焦らし、恥ずかしさに耐えられなくなった妻が、再び入れて欲しいとお願いするのを待ってから、ゆっくりと妻の中に入って行きました。

入れる時はゆっくりと動いていた稲垣も、完全に入ってしまうと最初から激しく動き、必死に耐えていた妻も、終にはお尻の穴も晒してしまい、延々と続く激しい責めに耐えられなくなって、マットに崩れ落ちてしまいました。

稲垣に見られながら、自分だけが醜態を晒すのが恥ずかしくて要求した交わりも、稲垣は一度出していた為に、結局一人だけが恥を掻いてしまうと言う結果に終りました。
それも、私にも余り見せたがらなかった恥ずかしい格好で。

まだ終っていなかった稲垣は、妻の腰を掴むと持ち上げて、また恥ずかしい格好にさせ、今度も初めから激しく動いた為に、妻はまた稲垣を待たずに崩れ落ち、次に腰を持ち上げられた時には、妻に両腕で身体を支えるだけの力は無く、お尻だけを突き上げた格好で稲垣を奥深く受け止め、妻も同時に3度目の頂上に登り詰めました。

先に一度出させたのは、妻をじっくりといたぶる目的も有ったのかも知れません。
稲垣は一石二鳥も三鳥も考えていたのでしょう。
稲垣は、やはり妊娠が心配だったのか、また妻にお尻を突き上げた体制をとらせ、今迄自分の欲望を打ち込んでいた場所に指を2本入れると、シャワーを当てながら掻き出す様な、中を洗う様な動作を繰り返していたのですが、指とシャワーの刺激で、妻は、また恥ずかしい声を漏らしてしまいました。

「おいおい、綺麗にしてやっているのに、また感じ出したのか?
智子は普段の大人しい様子からは、想像もつかないほどエッチが大好きなのだな。
独身の男子行員はみんな智子の事を、
お淑やかで優しくて、結婚するなら智子の様な女が理想だと言っているが、
お尻を突き出して洗ってもらいながらも感じてしまい、
嫌らしい声を出しているこの姿を見せてやりたいものだ。
逝く時も激しいし、みんな驚くだろうな。」

とても治療をしているとは思えない言葉にも、中で動き回る二本の指の下で硬くなり、包皮から半分顔を出してしまっている小さな突起に、空いている親指で新たな刺激を加えられては、何も言い返せずに、ただ嫌らしい声を上げながら、腰をくねらす事しか出来ませんでした。

「腹が減ったから食事に行こう。」

その声で我に返ると、いつの間にかリビングのソファーに座っていました。
視線を自分の身体に向けると、パンティー1枚だけしか身に着けていません。
慌てて両手で胸を隠し、どうしてこの様な格好で座っているのか思い出してみると、あの後、指とシャワーの刺激で気を遣らされ、朦朧とした意識の中、稲垣に身体を拭いてもらってからパンティーまで穿かせてもらって、ここに連れて来られたのだと知り、羞恥心で消えて無くなりたい思いでした。

服を着てから化粧を直し、稲垣の車で結構遠く離れた場所のファミレスに行き、向かい合って食事をしたのですが、身体の隅々はおろか中までも見られ、その上何度も気を遣る姿まで見られた妻は、恥ずかしさから稲垣の顔をまともに見る事が出来ずに、食事も喉を通りません。

「食べておかないと、朝まで身体がもたないぞ。」

「えっ・・・・・・・。もう充分です。ありがとう御座いました。」

「いや、念には念を入れておこう。
本当は何日か関係を持った方が効果も大きいらしいが、今までの私と智子の良い関係が壊れてしまっては嫌だから、今日限りにしておきたい。
仕事で疲れている上に智子が激しいから、つい私も激しく動いてしまい体力の限界なのだが、ここまでしてしまったら、どうしても子供を授かって欲しい。
子供を授かってもらわないと、私達の気持ちは違っても、ただの浮気と同じになってしまう。
私も眠りたいのを我慢して頑張るのだから、智子も発情期に入れるように、何もかも忘れてより感じる様に努力して欲しい。」

稲垣は単に、関係がずるずると長引いて私や奥さんにばれるのを恐れ、この機会に出来るだけ妻の身体を楽しもうと思っただけなのでしょうが、やはり、妻には稲垣の真意が見抜けずに、また感謝の言葉を言いながら、稲垣に肩を抱かれて車に乗り込みました。

稲垣の運転する車は、マンションには向かわずに逆の方向に走って行きます。

「何処に行くのですか?」

「ああ、ラブホテルに行こうと思っている。
私はその様な所に行った事が無いので、恥ずかしくて気が進まないのだが、その様な所の方が現実から離れる事が出来て良いかも知れない。
正直に言うと、口でして貰っていた時も、智子では無くて、必死に妻だと思う様にしていた。
その後も顔が見えない様に後ろからしていたので、これは智子ではなくて妻だと自分に何度も言い聞かせ、どうにか最後まで維持する事が出来たが、そうそう上手くいかない気がする。
相手が智子だと意識すると罪悪感も有るし、それ以上に大切な人を壊してしまう様な気がして、智子には治療だと思えと偉そうな事を言っていたのに、私には無理な様な気がする。
どう考えても智子とラブホテルはイメージが結び付かないから、そこなら智子を違った女性だと思う事が出来るかも知れない。」

「そんなにまでして私の為に。」

行為を始める前から硬くしていたくせに、この様な事をよく平気で言えるものだと思いましたが、それが妻には分かりません。
それに、奥さんに知られるのが嫌で、洗い流せば痕跡が残らないバスルーム以外での行為を避け、最初から、本格的な行為はラブホテルに行ってしようと計画していたと思うのですが、妻は疑いもせずにまた感謝の言葉を言っています。

ラブホテルには行った事が無いと言っておきながら、妻を乗せた車は道に迷う事無く、細い裏道を抜けて、知人に会う可能性の無い、ワンルームワンガレージのラブホテルに入って行きました。

部屋に入ると稲垣は椅子に座って、妻をベッドの上に立たせ、
「そこで私を誘う様に、いやらしく1枚ずつ脱いでいってくれないか?」
「そんな事出来ません。恥ずかしいです。稲垣さんが脱がせて下さい。」

「私だって、智子にその様な真似はさせたくは無いさ。
でも、車の中で言ったように、今は君を智子だとは思いたくない。
智子だと意識すれば、私の物は役に立てないかも知れない。
だから街で拾った娼婦だと思いたい。」

ただ妻に嫌らしい行為をさせたいだけで、既に硬くしている事も知らずに、言われた通り別人になり切れば、稲垣の罪悪感を少しでも和らげる事が出切るかも知れないと思った妻は、舞台に上がったストリッパーの様に、一段高いベッドの上で、ゆっくりと1枚ずつ脱いでいきます。

しかし、上と下の恥ずかしい部分を隠す布を身に着けただけの姿になった時、ここまでは頑張れた妻も、自分だけきちんと服を着ている稲垣にじっと見られていては、自分だけが全てを晒す事は恥ずかしくて耐えられず、手が止まってしまいました。

妻の気持ちを察した稲垣は、立ち上がると服を脱ぎだしたので、妻も上だけはなんとか外したのですが、やはり最後の1枚は脱げません。
稲垣を見ると、全裸になってまた椅子に座っていたそうですが、中心で硬くそそり立った物が目に入り、顔を背けてしまうと、
「横を向かないでよく見ろ。今は智子ではなくて娼婦だ。
智子がなり切ってくれないと私も駄目になる。
娼婦はこれを見たぐらいでは恥ずかしがらない。
これから目を離さずに、私に全て見える様に、パンティーを脱いで大きく足を開いて欲しい。」

妻は、稲垣の硬い物をじっと見詰めながら、ゆっくりとパンティーを脱ぎ、手で隠してはいましたが、徐々に足を開いていきました。
「手を退けろ。よし、今度は立膝になって、自分でそこを開いて中をよく見せてくれ。」

こんな普通では考えられない行為でも、自分の為に無理をして付き合ってくれていると思うと、従ってしまったと妻は言いましたが、私はそうでは無い様な気がします。
ラブホテルという異質な空間で、普段では有り得ないような行為を要求されている内に、妻は淫靡な世界に迷い込み、自分とは全く違った人間、それこそ娼婦になっていたのかも知れません。
稲垣の硬くそそり立った物を、じっと見詰めさせられている内に、頭の中はその事だけでいっぱいに成っていたのかも知れません。
どうしてこの様な事をしているかなどと言う、最初の目的など忘れてしまい、
「両手ではなく、片手で開けないか?出来るじゃないか。
それなら開いたまま、空いた手を後ろに着いて、お尻を持ち上げて前に突き出せ。
そうだ、よく見えるぞ。中まで丸見えだ。」

稲垣は椅子から立ち上がると妻に近付き、中を覗き込むようにして見ていましたが、妻がベッドに背中から崩れ落ちると自分もベッドに上がり、妻の身体の裏も表も足の指さえまでも全身に舌を這わせ、最後は妻が一番感じる小さな突起を集中して責めた為に、妻は稲垣の挿入を待たずに一人、気を遣ってしまいました。

しかし、稲垣は妻に休む事を許さず、すぐに妻の上に乗って来て繋がると、ゆっくりと動きながら、妻の顔をじっと見て、感じて行く時の表情を楽しんでいたのですが、達したばかりで身体が敏感になっていた妻は、そのゆっくりとした動きだけで、また気を遣ってしまったそうです。

「少し休ませて下さい。お願いします。」

「ああ、智子は休んでいていい。私が勝手に動くから。」

「それでは休めません。動かれていては・・・・・・いや・・・いや・・・・また駄目になる。
また・・また・・止めて、駄目になってしまう・・・また・・・・いや??。」

その後も稲垣の責めは続き、妻は面白いほど気を遣り続けて、最後には放心状態になってしまい、ようやく稲垣も放出して終りました。
「この時もコンドームは着けずにしていたのか?」

「いいえ、ホテルでは着けてくれていた様です。」

「話がおかしいだろ。」

「私も帰る車の中でその事を聞いたのですが、効果が少なくなるだけで全く無い訳では無いから、付けた方が直接触れ合わない分、罪悪感が少なかったと言われました。
私の中に出してしまうのは、私を汚してしまう様で、やはり嫌だったと。」

他の男の精子を身体で感じろと言っておきながら、今度は避妊具を装着しても、妻にはその矛盾が分からないのです。
ただ妊娠を心配していただけだと、誰にでも分かる事を、この様な説明で納得してしまうのです。
妻は、それほど、全面的に稲垣を信用し切っていたようです。
冷静な者が聞けば、稲垣の言っている事は最初から矛盾だらけなのに。

私は、娘がどの様にして出来たのか知りたいから、セックスの様子を教えてくれと言い、ここまで聞き出しました。
これで娘がバスルームでの行為によって出来たと分かった訳ですから、本当ならこの先は聞かなくても良い事になります。
しかし、私の知りたい欲求は収まる事はなく、私の知らない妻が存在する事を許せません。

「朝までと言う事は、それでも終らなかったのだな?」
幸い妻は、私が何を知りたかったか等という事は忘れてしまっている様子で、
「・・・・・はい。」

何度も達してしまい、意識が朦朧としていた妻が息苦しさを感じると、裸の稲垣が上に乗って乳首に吸い付いていたので、
「もう出来ません。もう身体が動きません。」
「いいのか?智子はそれでいいのか?赤ちゃんが少しでも出来易くする為なのに、ここで止めてしまってもいいのか?」
そう言われた妻は気力を振り絞り、稲垣の欲望を身体で受け止め続けたのですが、夜が明ける頃には、流石に精も根も尽き果ててしまい、稲垣によって大きく開かされた足を閉じようともせずに、恥ずかしい部分を隠す事も無く、ぐったりと大の字になっていました。

しかし稲垣はそれでも許さず、開かれた足の間に座って、襞を摘んで大きく開いて覗き込んだり、
指を入れて中の感触を楽しんだり、包皮を剥いて完全に露出させたクリを虐めたりして妻の身体を弄んでいましたが、
妻の身体はたまに小さく反応するだけで声を出す事も無く、ぐったりとしていたので、
「よし、次で最後にしておこう。」
そう言うと妻の中に入って延々と一方的に動き続け、虚ろな目で天井を見詰め、微かに反応するだけの妻を見ながら放出し、長かった一夜はようやく終りました。

妻の話を聞き終わり、少し冷静になった時に思ったのが、やはりこの話は本当なのかと言う事でした。
妻の話し方からは真実を話している様に感じ、話にのめり込んで聞いていましたが、いくら普通では無い精神状態だったとは言え、この様な嘘に意とも簡単に、本当に妻は騙されたのかと言う事です。

元々稲垣の騙す様な行為など無かった場合、私と言い争いになり、ただ自棄に成っていて抱かれたのでは無いのか?
稲垣の事が好きで抱かれたかっただけでは無いのか?
ただ稲垣とセックスがしたかっただけではないのか?
もっと悪く考えれば、最初から稲垣の子供が欲しくて関係を持ったのではないのかとも思えて来ます。
次に稲垣の騙す様な行為が有った場合ですが、本当に私の子供が欲しくて、こんな事を信じだのか?

自分への言い訳に、最初から嘘だと知りながら抱かれたのでは無いのか?
最初は信じていたとしても、途中からは嘘だと気付きながら快感に負け、欲望に流されたのでは無いのか?

しかし、この様な嘘に騙された事が本当だとすると、稲垣は妻にとって想像以上に大きな存在だという事になります。
宗教的なものには結構多く有り、教祖に騙されて身体を奪われた女性も少なく無いと聞きます。
私が聞いたもっと悲惨な例では、医者にかかる事は良く無いと言われ、病気の子供を医者に診せずに死なせてしまったと言う事が有りました。
しかし、もっと悪いのは、その後も騙された事に気が付かない事です。

教祖に抱いて頂いたから、私は特別な人間に成ったとか、医者にかかっていたら、もっと痛みを伴って死んでいたと聞かされ、子供を亡くしていても尚、その事を信じている事です。

稲垣に今でも特別な感情を持っていると思われる妻も、それに近いものが有るのではないかと思えるのです。
この話が本当だとすると稲垣の体力、精力は、私には信じられないものでした。
いくら9年前で今よりは若かったと言っても40歳は過ぎています。

おそらく稲垣は以前からずっと、妻を抱きたい、征服したいと思っていて、やっと願いが叶った為に出来た所業ではないかと思います。
あの可愛い娘が実の子供ではないだけでも、死にたいほどのショックなのですが、この様に妻を騙して出来た子供かと思うと、尚更娘が不憫でなりません。
それ以上に、妻がその様には思っていない事が悔しくて仕方が無いのです。

妻の話を聞いて、悔しさで泣きたくなっていた時、急にドアがノックされたので、稲垣夫婦が来ていた事をすっかり忘れてしまっていた私は、一瞬ドキッとしました。
ドアを開けると奥さんがいて、その後ろには稲垣が隠れる様に立っています。
奥さんは何か言っているのか口が動いているのですが、私の耳には何も聞こえません。
私は奥さんを押し退けて、稲垣の前まで行くと思い切り殴りつけ、よろけて尻餅をついた稲垣に、馬乗りになって殴ろうとした時、横から奥さんが稲垣の上半身に覆い被さって庇いました。
仕方なく私は稲垣から降りましたが、この時の私は鬼の様な形相をしていたと思います。

「今日はもう帰ってくれ。」
娘の事を言おうかとも思いましたが、稲垣を庇う奥さんを見ていて、何れは分かる事でも、今奥さんをこれ以上悲しませる事は出来ないと思ってしまい、何も言わずに逃げる様にキッチンに行きました。

静まり返った中、車のエンジン音だけが聞こえます。
やがてその音も遠退き、私はどうしてセックスの事まで、詳しく知りたいのか考えていました。
それを聞いても当然興奮などは有りません。
それどころか、聞けば聞くほど怒りを覚え、悔しさが大きくなって行きます。
それなのに全てを知りたい。
私の知らない妻が存在する事を許せない。
ほぼ離婚する事になると思っていても、知りたい欲望は消えない。
離婚するのなら、ただの『酷い女』で良い筈です。
私を裏切った『酷い女』だから別れる、それだけで良い筈です。

本当は離婚をまだ、ためらっているのかも知れません。
知りたいと言う事は、まだ妻に対しての未練が残っているのでしょう。
いいえ、未練以上に、私はもっと小さな男で、私と別れた妻が稲垣と再婚し、娘と親子3人幸せに暮らすのが、許せない感情の方が強いのかも知れません。
正直なところ、自分でも自分の気持ちがよく分からない状態です。

しばらくその様な事ばかり考えていましたが、これ自体私の逃げで、極力娘の事を考えたく無かったのです。
娘の事から逃げたかったのです。
しかし、私のその様な思いとは裏腹に、考えなければならない時はすぐにやって来てしまいました。
暫らくして入って来た妻の手には、大きなバッグが握られています。
「あなた、ごめんなさい。
私は、あなたの人生を無茶苦茶にしてしまいました。
私自身の幸せも、自分で壊してしまいました。
今迄ありがとうございました。本当にごめんなさい。」

「理香は連れて行くなよ。理香は俺の娘だ。
誰の子であろうと理香は俺の娘だ。
俺から全てを奪って行く事は許さん。
行くなら一人で出て行け。」

言ってしまってから、何故この様な事を言ったのか考えました。
娘を、自分の子供として育てていけるのか?
憎い稲垣と妻との子供に、今迄通り愛情を注げるのか?
妻への嫌がらせに、娘を取り上げようとしているだけでは無いのか?
しかし、何も考えずに口から出た言葉が、私の本心だと知りました。

離婚するにしてもしないにしても、このまま別れたのでは後で必ず後悔すると思っていても、私から離婚だと言い、出て行けと言っていた手前、出て行くなとは言えません。
妻の本当の気持ちは知りたいくせに、この様な大事な局面でも自分の本心は出せないのです。
出て行かないでくれなどと言って、少しでも自分が不利になる様な事は出来ないのです。
この件についての、絶対的有利を崩したくないのです。
このまま別れてしまえば、残るのは金銭的な問題の有利不利だけで、妻をもう責める事も出来ずに、夫婦としての有利不利など無くなってしまうのに。

取り上げていた妻の携帯を渡し、口から出たのは思いとは逆の言葉でした。
「もう会う事も無いと思うから、今後の事は電話で話し合おう。」

妻は暫らく、渡された携帯を見詰めていましたが、
「理香は連れて行かせて下さい。理香と離れる事なんて出来ません。お願いします。」

これを聞いて、少しだけですが気が楽になりました。
何故なら、娘を渡さない限り妻との縁は切れないからです。
実の娘では無いにしても、今まで愛情を注いで来た可愛い娘まで、妻との駆け引きに使おうとしている自分が情けなくなります。

「本当の父親でも無いお前なんかに権利は無いと言いたいのか?
奴との愛の結晶を奪うのかと言いたいのだろ?
俺とは別れたいが、好きな稲垣との子供とは別れられないか。」

「違います。私はあなたとも・・・・・・・・・・。
ごめんなさい、もう何を言っても信じては頂けないですね。」

妻が玄関に行くまでずっと、どの様に引き止めようか考えていたのですが、良い言葉が見つかりません。
妻は、このまま、稲垣のものになってしまうのかと思うと、悔しくて堪りません。
「おまえが行ける場所は稲垣の所しか無いはずだが、今は奥さんが来ているぞ。これから2人で奥さんを追い出すのか?」

「彼の所には二度と行きません。」

「それなら何処に行く?もう嘘はつかなくてもいい。別れるのにこれ以上、俺に嘘をついたところで同じだろ。」

「何処に行けば良いのか分かりません。私が行ける場所はどこにも無いです。
駅に行って、始発を待ちながら考えます。
あなたや典子さんへの慰謝料の事も有るから、何処か住み込みで働ける所でも探してみます。」

「それが本当なら、行き先も分からずに、理香を連れて行くつもりだったのか?
やはり理香を連れて、稲垣の所に行くつもりだったのだろ?」

「違います。本当に彼の所には行きません。」

妻はそう言い、暫らく考えてから。

「そうですね。理香を連れて行きたいと言ったけれど冷静に考えれば、
落ち着く先が決まってもいないのに、理香を引き取る事も出来ない。
勝手なお願いですが、それまで理香の事をお願いします。」

「それまでも何も、理香は絶対に渡さん。
お前は今迄、俺の子供では無いと分かっていながら俺の母親に預けて、あいつに抱いてもらいに行っていたのだぞ。
理香の不憫さが分からないのか?」

妻が泣きながら出て行ってしまい、私の心に大きな穴が開いてしまいました。
正確に言うと娘の事が有るので、大きな穴が2つも開いてしまった状態です。
暫らくの間ぼんやりと考えていたのですが、考えれば考えるほど私の怒りは稲垣に向かい、稲垣の携帯に電話をしたのですが、出たのは奥さんでした。
「折角来て頂いたのに、帰れと言ってしまい申し訳無かったです。アパートに着いたらご主人だけ、またこちらに来てもらって下さい。」

「私もお邪魔しても良いですか?
車に乗ってから主人が重大な事を告白したので、車を止めて話していて、実はまだ近くにいるのです。
その事をご主人と智子さんに聞いて頂きたいのです。」

私には、奥さんの言う重大な事が娘の事だと分かっていたので、別に今更聞きたい話でも無く、奥さんがいては怒りをぶつけ難いので、本当は稲垣だけに来て欲しかったのですが、
「ええ、構いません。ただ智子は出て行ったのでいませんが。」

「えっ、何処に?」

「分かりません。駅で始発を待つと言っていたので、今頃まだ駅に向かって歩いているのか、駅に着いていたとしても始発までには、まだ何時間も有りますから、駅のベンチにでも座っているのではないかと思います。」

私が詳しい話をしたのには、奥さんの優しさに縋り、妻を連れ帰って欲しいという期待が有ったのかも知れません。

私は、気が落ち着かず、檻の中の熊の様に家の中を歩き回って待ちましたが、近くにいると言っていたはずが30分経っても来ません。
きっと妻を説得してくれているのだと期待しながら待つと、それから1時間ほど経った頃に、家の前で車の止まる音がしました。
私は、余裕が有る様な振りをしたくて、慌てて居間に行くと煙草に火をつけましたが、一向に誰も入って来ません。
暫らくして奥さんの、私を呼ぶ声が聞こえたので玄関まで行くと、妻が稲垣と奥さんに支えられて立っています。
妻は遠くを見ている様な虚ろな目をしていて、私の方を見るでも無く、全体に正気が感じられません。
例え支えてくれているとしても、稲垣が妻に触れている事が気に入らず、妻を支えてから稲垣を突き飛ばし、奥さんに手伝ってもらって寝室のベッドに寝かせ、
「何が有ったのですか?」

「智子さんの前では何ですから、他の部屋で。」

妻の様子が心配で離れたくは無かったのですが、一時的なショックを受けただけなので、大丈夫だろうと奥さんに言われ、妻を残して3人で座敷に行きました。
「ショックを受けた?」

「はい。あの後、ご主人の姿が見えなくなると、この人は慌てて逃げる様に車まで走って行きました。
遅れて車まで行った私が乗ろうとすると全てロックがして有り、私だと分かると開けてくれたのですが、
走り出せば自動でロックされるのに、わざわざロックをしてからエンジンをかけ、様子がおかしいのでよく見ると、手足が微かに震えていて。」

おそらく稲垣は、私が怒った顔でキッチンへ行ったので、また包丁を取りに行ったと思ったのでしょう。
「余りに様子がおかしいので、どうしてご主人があの様に激しく怒り出したのか聞いたら、とんでもない事をしていた事を白状しました。
それも身の危険を感じて、私の様な者に助けてもらおうと、震えながら話して来ました。
殺されても文句も言えない様な事をしておきながら、もしかしたら殺されるかも知れないと言って、女の私に助けてもらおうと縋って来ました。
私の100年の恋も一度に覚めました。
この人は最低な男です。
学生時代は勉強も出来て、今は仕事も優秀かも知れないけど、人間的には最低な人間です。
私は今まで、こんな男に気に入られようと努力していたかと思うと悔しいです。
こんな男に捨てられないように努力していたのかと思うとやり切れません。
こんな男、私の方から捨ててやる。」

奥さんは、その話になると興奮していて、妻があの様な常態になった事の説明をしてくれずに、一気に捲くし立てると、畳に伏せて泣いてしまいました。
「典子。」

稲垣が弱々しい声で奥さんを呼ぶと、奥さんは顔を上げて、
「私の事を呼び捨てにしないで。もうあなたの妻をやめます。もっと早く気付けば良かった。そうすれば私の人生も変わっていた。」

私は最初、奥さんが稲垣の事を最低の男だと言っているのは、妻との間に子供を作った事だと思いましたが、
その事は、妻も知っている事で、その事を奥さんに詰られたくらいでは、泣き叫んで取り乱すことは有っても、
あの様な状態にはならないと思い、奥さんに質問しようとしましたが、奥さんの話は続き、
「あなたは最低な男です。妻としては勿論ですが、女としても絶対に許さない。
智子さんに同情はしたく無いし許す気も無いけれど、あなたのした事は余りにも酷すぎる。
同じ女性として、あなたが智子さんにした事を絶対に許さない。」

奥さんの、妻を庇うかのような言葉に困惑していると、
「この人は智子さんを騙していたのです。それも、智子さんの一番弱いところを利用する様な、もっとも下劣な騙し方で。」

「それはどの様な事ですか?
奥さんもお聞きになったかと思いますが、
騙して妻を妊娠させ、娘がこの男の子供で有る事を言っておられるのですか?
お願いですから教えて下さい。
娘が私の子供では無いと分かった今、もう何を聞かされても怖くは無いです。」

「私からはとても言えません。話すだけでも気分が悪くなる。」

そう言ってから稲垣を睨みつけて、
「あなたが言いなさい。助けを求めて私に話し、その後智子さんに話したのと同じ事を、もう一度ご主人にも話して謝りなさい。
きっとそれ以外にも有るのでしょ?
もう何もかも全て正直に話したら?
この期に及んでまだ隠そうとするのなら、私は皆に全て話して、あなたが何処にも顔を出せない様にしてやる。
銀行やあなたの友達、子供達にもあなたがどの様な人間なのか教えてやる。
あなたがもっとも知られたくない、大事な大事なお母様にも全て聞かせて、どんな育て方をしたのだと言ってやる。
もう離婚を覚悟したから、私は何も怖く無い。
早くご主人に全て話して謝ったら?早くしなさいよ。」

奥さんは涙を流してはいても怒りは物凄く、稲垣を死ぬほど殴りたいと思って呼び付けた私は、奥さんの気迫に押されて、殴るどころか罵倒する事さえ出来ずにいました。

私が急に殴ったのは、娘の事を妻から聞いたからだと感じた稲垣は、
私の怒りの深さに脅え、穏便に済む様に、奥さんに私を説得してもらおうと全てを告白したのでしょう。
私を恐れて、私から1番離れた部屋の隅に正座していた稲垣は、奥さんの言葉で、私の顔色を伺うかの様にゆっくりと近付いてくると、少し離れたところで土下座して、
「ご主人、申し訳有りませんでした。
私はずっと奥様を騙していました。
若い頃から奥様が私に特別な感情を持っていると気付いていたので、それを利用してしまいました。」

「そんな事は、妻の話を聞いて知っている。
それよりも、娘の事はどうするつもりだ?
今更おまえの子供だと言われても、俺は納得出来ない。
いや、絶対に納得しない。娘は俺の子供だ。」

「その通りです。ご主人のお子さんです。私の子供では有りません。」

「ああ、だからと言ってこの責任は重いぞ。
娘は俺の子供と思って育てる。だが、おまえは絶対に許さない。
命を弄びやがって。例えおまえが死んでも俺は絶対に許さない。」

「違うのです。本当にご主人のお子さんなのです。私の子供では有り得ないのです。」
私は稲垣お得意の逃げだと思い、
「どうせ妻といる時は、お互い不倫の事は、気付かれない様に離婚して、本当の親子3人で再出発しようと話し合っていたのだろ?
それがばれて、自分達の思い通りには離婚出来なくなったら、今度は自分の子供では無いと言って責任逃れか?」

その時奥さんが、
「違うのです。本当にご主人のお子さんなのです。
この人の話だと、確か娘さんはO型ですよね?
智子さんにはO型だと言って騙していたらしいのですが、この人はAB型です。」

一瞬、訳が分かりませんでしたが次の瞬間、声を出して泣きたいほどの喜びが湧いて来ました。
しかし、手放しで喜ぶ訳には行きません。
何故なら散々嘘をつかれていて、何が本当で何が嘘なのか分からない状態だったからです。
癌だと言われて入院し、再検査の結果、良性のポリープだったと言われ、死を覚悟していただけに、泣きたいほど嬉しいはずが、もしかすると隠さなければならないほど、末期の癌かも知れないと、疑っているのと同じ様な状態です。

「本当にAB型で間違い無いですか?」
「はい。」

「おまえには聞いていない。おまえの言う事は信用出来ない。」
すると奥さんが、
「AB型で間違いないです。お疑いになられるのも当然です。
自宅にこの人の献血手帳が有ると思いますので、コピーをとって後日お送り致します。
私を信じて下さい。」

この時、妻と稲垣の事など、もうどうでも良いと思えるほど嬉しかったのを覚えています。
そかし、稲垣の前では喜ぶ事も、ましてや嬉し泣きなど出来るはずも無く、怒った顔をしながら、心の中では娘が我が子だった事の喜びを噛み締めていました。
しかし時間が経過すると、娘が私の実の子だったと言う事だけで、もう充分だと思えていた気持ちは次に移り、
妻があの様な状態になったのは、それを聞いてショックを受けたのだとすると、
私の子供だった事を喜ばずに、稲垣の子供で無かった事がショックであの様に成ったと思え、また私に怒りが戻って来ました。
「全て聞かせてもらおうか?」
「・・・・はい。」

そう言ったきり何も話さない稲垣に対して、妻に対する怒りまでもが向かい、髪の毛を掴んで立たせると、また殴ってしまいました。

殴られて座り込んでしまった稲垣を、今度は蹴ってやろうと足を振り上げたのですが、その瞬間、稲垣はそっと目を瞑り、
「何でも話します。全てお話します。」
そう言われたので、何故か私は振り上げた足を下ろしてしまい、そのままではばつが悪く、稲垣を足で突き倒すと胡坐を掻いて座ました。

「おまえは智子の事をどう思っている?好きなのか?若い頃からずっと好きだったのか?」
何故か私は、この様な事を聞いてしまいましたが、こんな事は真っ先に聞かなくても良い事でした。
妻の気持ちは知りたくても稲垣の気持ちなど、後で聞けば良い事でした。
しかし、聞いてしまった手前話を続け、
「婚約中にも関わらず、妻には特別優しくしたそうだが、その頃から好きだったのか?」

「いいえ、好きだとか言う気持ちでは無かったです。勿論可愛いと思い、凄く興味は有りましたが、特別好きとか言う気持ちは無かったです。」

「それならどうして妻に特別優しくした?どうして近付いた?」

「それは・・・・・・・・・・。」
稲垣が顔色を伺うかの様に奥さんを見ると、
「私も聞きたい。もう正直に何もかも話して。」
「それは・・・・・智子さんの胸が・・・・気に成って・・・・・・。」
稲垣は妻が同じ支店に配属されて以来、妻の豊満な胸が気になって仕方がなかったそうです。
そうかと言ってじろじろ見る訳にもいかず、周りに気付かれない様に時々横目で見ては、頭の中で想像を膨らませていたそうですが、ある時伝票を渡しに行くと、妻は机に向かって前屈みで仕事をしていた為に、ブラウスの胸元から胸の膨らみが少しだけ見えました。

その事で味を占めた稲垣は、何かと用を作っては妻の所に行く様になり、仕事で困っている様子が有った時などは、真っ先に行って教えながら胸元を覗き、見えない時でも直近で膨らみを見て楽しんでいた様です。

しかし周囲の目も有り、妻にばかり仕事を頼む訳にもいかず、自分ばかりが教えに行くのも不審に思われると思い、妻が自分に恋愛感情を抱いているのではないかと感じ出した頃からは、勤務時間中は無関心を装い、仕事が終ってから喫茶店などで待ち合わせ、妻の悩みを聞きながら服に包まれた妻の胸や身体を間近で見ては、想像を膨らませる様になりました。

これほど露骨には出来なくても、同じ男である私には、ここまでの気持ちは分からない訳では有りません。
私も女子社員がタイトスカートなどを穿いて来た時などは、お尻の丸みが気になる事も有りますし、通勤時なども、夏場女性が薄着になるのは嬉しいものです。

「その頃から妻を抱きたかったのか?」

「抱きたいと言うよりは、いつも想像していた裸を見たかったです。
いいえ正直に言います。出来ればそうしたかったです。
私の事を好きになっていると感じていた時は、
ホテルに今日は誘おう、明日は誘おうと思っていましたが、
婚約していた事も有って、思うだけで結局そこまでの勇気は出ませんでした。
その内これは恋愛感情を抱いているのでは無く、兄か父親の様に思っているのかも知れないと感じ、
そう思うとトラブルが嫌で、余計に誘う事も出来なくなりました。」

その時奥さんが、
「智子さんを抱きたかったと言う事は、
その時点で私よりも智子さんを愛していたと言う事でしょ?
正直に、好きだったと言ったら。
どうして私と結婚したの?その時どうして私を振ってくれなかったの?」

この時の稲垣の気持ちは分かりませんが、奥さんのこの話は少し違うと感じました。
私は、男なので女性の気持ちは分かりませんが、男は好きな人がいても他の女性と出来てしまうのです。
男は、出来てしまうと言い切ると、そうでない方に悪いのですが、私には出来てしまいました。

妻と付き合う前にも、何人かの女性とお付き合いした事は有りましたが、その時々相手を真剣に愛していて、身体の関係も有りながら、友達とソープに行ったりした事も有ります。
お尻を振りながら前を歩く女性を見ていて、抱いてみたいと思った事も有ります。
結婚してから妻を裏切った事は有りませんが、正直その様な気持ちが無い訳では有りません。

奥さんは、私がいるのも忘れているかの様に、自分が疑問に思っていた事を稲垣に問い詰めだし、
「どうして好きでも無い私と付き合ったの?
どうしてお母様にあれだけ反対されても、好きでも無い私なんかと結婚したの?」

「いや、付き合っていて愛していると分かったからプロポーズした。これは本当だ。」

「それなら逆を言えば、それまでは、好きでも無いのに交際を申し込み、好きでも無かったのに付き合ってくれていたという事?」

「その頃は、お袋に逆らいたかっただけかも知れない。でも結婚したのは愛したからだ。典子だけを愛していたからだ。これは本当だ。」

「それなら今はどちらが好きなの?智子さんなの?私と子供まで捨てて、一緒になろうとしていたのだから、智子さんの方が好きになったのね?私の事は嫌いになったのでしょ?」

「嫌いじゃない。智子さんを好きになってしまったと思い込んでいたが、本当は典子の方が好きだったと気付いた。
典子から逃げようとしていただけで、本当は典子や子供達と一緒にいたいのだと、
最初ここにお邪魔した時の、典子の話を聞いていて、はっきりと分かった。」

「私から逃げる?」
2人の会話を聞いていて分かった事は、稲垣は幼い頃から2人の姉と比べられながら、勉強から生活態度まで母親に厳しく育てられた様です。
優秀な姉と比べられながらも母親に褒められたくて、母親の望む通りの学校へ行き、父親も銀行マンだった為に銀行に就職しろと言われて、母親が選んだ銀行に就職し、後は母親が決めてくれる相手と結婚するだけのはずでした。

しかし、一流大学を出ていて趣味はピアノ、お茶やお花の師範の免状も持っている娘とお見合いをしろと言われた時に、ようやく自分の人生がこれで良いのか考える様になり、母親に初めて逆らって、母親の理想とは逆の、大学を出ていない習い事もした事のない奥さんと付き合ったそうです。

「口喧しいお袋や姉達に逆らいたくて、典子と付き合ったのかも知れない。
お袋に決められた人生が嫌だという理由だけで、典子と付き合ったのかも知れない。
お袋が理想としている女性以外なら、誰でも良かったのかも知れない。
しかし、付き合っていて好きになったから結婚したのは本当だ。
私はそれまで、女は皆お袋や姉の様な生き物だと思っていた。
お見合い写真を見て、この女と結婚をしてもあの様な生き物が、身の回りにもう一人増えるだけだと思った。
しかし、典子と付き合ってみるとお袋達とは違っていた。
最初は私と結婚出来る様に、優しい振りをしているのでは無いかと疑っていたが、違うと分かったから結婚したいと思った。
実際、結婚してからも典子は優しく、私に逆らう事も無く、常に私を立ててくれて、典子といると私は男なのだと実感出来た。」

「私だけでは無いでしょ?智子さんにも同じ様な思いを感じていた。違う?」

「そうかも知れない。でも愛していたのは典子だった。しかし・・・・・・。」

結婚当初、何でも稲垣の言う通りにしていた奥さんも時が経つにつれ、当然の事ながら全て稲垣の思う様には出来ずに、意見が食い違う事も出て来ました。
特に子供が生まれてからは、奥さんが稲垣に色々頼む事も増えたのですが、私にはそれが普通だと思えても、幼い頃からのトラウマが有り、常に女性よりも優位な位置にいたいと思っていた稲垣には、奥さんに命令されている様に聞こえたと言います。

最初は奥さんに謝る様な雰囲気だった稲垣も、次第に奥さんへの不満を訴え出し、
「セックスもそうだ。最初の頃は私がしたい時に応えてくれていた。
しかし、子育てに疲れているとか何かと理由をつけて、徐々に典子主導になっていった。
私はしたくなると、典子の顔色を伺っては、お願いする立場になってしまった。だから・・・・・。」

「だから何?だから智子さんを騙して浮気したと言いたいの?
9年前の浮気は、私のせいだと言いたいの?
私は精一杯あなたに応えていたつもりです。
よく思い出して下さい。
風邪気味で熱っぽい時や、子供が熱を出して前日ほとんど眠っていない時なんかに言われても、それは無理です。
それなら、今回の事は何と言い訳するつもりですか?」

「典子はずっと私を疑っていた。
私の帰りが遅かったり、出張が有ると必ず事細かに行動を聞いてきた。
疑っていた訳が、脱衣所で拾った智子さんのイヤリングの一部だと今回分かったが、私は全て監視されているようで息苦しかった。
結婚するまではお袋や姉で、今度は典子かと思った。」

「でも、結局は疑われる様な事をしていたのでしょ?あなたが何もしていなければ、この様な事にはならなかった。私に責任転嫁しないで。」

奥さんが母親の様になってきたと感じた稲垣は、何でも言う事を聞く妻に惹かれ、妻に乗り換えようと思ったのでしょう。

稲垣と奥さんの話を聞いていた私は複雑な心境でした。
妻を愛していたのではなくて、奥さんを愛していると言うのは、全て失うのが嫌で、奥さんの手前言っている事だとしても、未だに妻を愛していると言われるよりは、今後の対処がし易いと思え、私には喜ばしい事なのですが、裏を返せば、妻を真剣に愛してもいずに、私の大事な家庭を壊した事になり、それは今迄以上に許せない事でした。

稲垣の話が本当なら、この様な歪んだ理由で家庭を壊されたのかと思うと、強い怒りを覚えます。
「そんな話は帰ってから2人でしてくれ。それよりも、今回の事を聞かせろ。どうやって妻と付き合う様になった?」
稲垣は、転勤が決まる前まで、行き付けのスナックに手伝いに来ていた、バツイチの女に入れ揚げていました。
お金の為に機嫌を取っていると分かっていても、その事が心地良かったと言います。
しかし奥さんは、女の影を感じてから相手は妻でないかと疑い、稲垣を問い詰める様な会話が増えていき、稲垣にはその事が煩わしく、転勤を期に単身赴任を強く望んだ事で、奥さんもそれまでの自分の態度を反省して、これを許したそうです。

いざ赴任するとそこには偶然にも妻がいて、稲垣は勝手に運命のような物を感じ、奥さんが浮気をして離婚になりそうだと嘘をつき、同情を惹いて近付いた様です。
妻は、以前凄く世話に成ったので少しでも恩返しがしたいと言い、外で会っていて要らぬ噂を立てられては、妻に迷惑を掛けてしまうからと言う稲垣の提案に乗り、アパートへ行く様になりました。

最初は稲垣の悩みを聞くだけだったのですが、次第に先に帰る妻が食事の用意をして稲垣の帰りを待ち、一緒に食事をする事も増え、休日には掃除や洗濯にも行く様になりました

「まるで通い妻じゃないか。智子がアパートに行く様になってから、すぐに抱いたのか?」

「いいえ、身の回りの世話をしてくれていただけでした。」

「以前に関係を持った事の有る男と女が、狭い部屋に2人だけでいて、何も無かったと言うのか?正直に話せ。」

「すみません。アパートに来る様に成って一ケ月ほど経った頃から、キスの様な事は・・・・・有りました。
私の執拗な要求に負けたのか、渋々ですが応じてくれました。
でも、身体の関係だけは、ご主人を愛していて娘さんにも顔向け出来ないので、いくら私の頼みでも聞けないと言って強く拒まれました。」

いくら特別な感情をもっていて、以前世話に成ったと勘違いしていたとしても、私が日本を離れてから2ヶ月ほどで、簡単にキスを許したのは許せません。
身体は許しても唇は許さないと聞いた事が有りますが、妻の場合それとは逆で、結婚している事が足枷に成っていて身体を許さなかっただけで、心は完全に許していたように感じてしまうのです。

私はこの運命の悪戯を怨みました。
私の単身赴任が無かったら、この様な事にはならなかったかも知れません。
多少、稲垣との接触はあっても、毎日私の顔を見ていたら、罪悪感からこれ以上は進まなかったかも知れません。
何より、稲垣と同じ職場にならなければ、稲垣との接触も無かったでしょう。
「それなら、どの様に関係をもつ様になった?」
「それは・・・・・・・・・・・・。」

「はっきりと言いなさいよ。私や智子さんに話した事をご主人にも話なさい。
もう、殴られても殺されても仕方が無いでしょ?
全てあなたがしてきた事なのだから。
少しぐらいは男らしく、もう腹を括ったら?」

稲垣は妻と会う度に、以前関係を持った時に見た身体が脳裏に浮かび、服は着ていても裸に見えたと言います。
稲垣自身も歳をとったせいか、腰の回りに肉が付き、以前よりも肉付きのよくなった妻のウエストを見て、乳房も以前より垂れた崩れかけた身体を想像すると、若い娘の身体よりも遥かに興奮を覚えたそうです。

抱きたいと言って断られたものの、その後も通って来てくれる妻を見ていて、何か方法が有るはずだと考え、思い付いたのが子供の事でした。

妻も私と同じ様に、血液型からだけではなくて稲垣の話す状況からも、娘は稲垣の子供だと思い込み、翌日には体調が悪いと言って銀行も休み、アパートに来る事も有りませんでした。
妻はその翌日も銀行を休んだので、夜稲垣が電話をすると、
「この事は主人には黙っておいて下さい。お願いします。」

「それは出来ない。これは全て私の責任だ。
今ご主人は大事な仕事をしておられるし、とても電話などでは話せる事ではないから、話すのは帰国してからになるが、何の責任もとらずに、このままにはしておけない。」

「それは困ります。」

「困るといわれても、このまま私の娘を他人に育ててもらう訳にはいかない。
どちらにしても、今後の事を話し合いたいから、明後日の土曜日にアパートまで来てくれ。」

妻は、言われた通りに、土曜の朝アパートに来たそうです。

「おまえは嘘の天才か?どうしてその様な言葉がすらすら出て来る?第一娘がO型で無かったら何と言って騙すつもりだった?」

「智子さんは、忘れているようでしたが、赴任してすぐに聞いていて、3人の血液型は知っていたので、他の血液型の事までは考えなかったです。」
初めて妻がアパートに来た時に家族構成を聞いて、子供は関係を持った後に出来た娘が一人いるだけだと知り、自分の子供では無いかと心配になり、他の話しに紛れてそれと無く血液型を聞き、自分の子供では有り得ない血液型だったので、ほっと胸を撫で下ろしたそうです。

しかし妻は、久し振りに稲垣と話せる喜びで舞い上がっていたのか、一人暮らしの男のアパートに来た事で緊張していたかで、話した内容を忘れてしまっていたのでしょう。
稲垣の嘘はその場の出任せでは無く、全て用意周到に準備された物だと分かり、妻がああ言えばこう言う、ああすればこうすると色々なケースを想定し、妻を落としていったのだと思います。

「その事と、身体の関係をもつ様になった事とは、どの様な繋がりが有る?」

土曜の朝から話し合っていても、このまま私には隠しておきたいと言う妻と、私に話すべきだと言う稲垣の話は平行線のままで、次第に妻はどうしたら良いのか分からなくなり、取り乱していったそうです。

しかし、稲垣にとってはこれも予定通りの事で、妻を抱くという目的を達成させる為に、妻が自分では判断出来なくなり、自分自身を見失って行くのを待っていたのです。
「2人で責任をとろう。理香ちゃんの為に、何もかも捨てて責任をとろう。」

「えっ?どういう事?」

「ご主人には悪いがお互いに離婚して、2人で理香ちゃんを育てて行こう。理香ちゃんに対して責任をとろう。今は理香ちゃんの幸せだけを考えよう。」

「私には出来ません。主人と別れるなんて出来ません。」

「私だってそうだ。離婚を考えてここに来たが、やはり妻には、まだ情が有る。
それに、智子と違い私は子供達とも別れる事になる。
しかし、今は自分の幸せや自分の都合を考えている時では無いと思う。
私の子供達と違い、理香ちゃんはまだ小さい。
理香ちゃんさえ大きくなれば、私はご主人に殺されても良いと思っている。
理香ちゃんが1人で判断出来る歳になるまで育てるのが私の責任だと思う。
智子も自分の幸せや世間体、罪悪感など全て捨てて、理香ちゃんの事だけ考えて欲しい。」

「それなら今迄通り、私と主人で・・・・・・・。」

「それでいいのか?智子はそれで平気なのか?
ご主人は何も知らずに、自分の子供だと疑いもせず一生懸命働き、
自分を犠牲にしてまで一生懸命愛情を注ぐ。
智子はそれを平気で見ていられるのか?
俺にはとても出来ない。
それに血とは不思議なもので、血の繋がりが無いといつかギクシャクしてくるものだ。
まさか自分の子供では無いなんて気付かないかも知れないが、お互いにどこかしっくりと来なくなる時が来る。
理香ちゃんも最初は戸惑うだろうが、いつか私の事を分かってくれる様になる。
それが血の繋がりだ。
本当の親子3人で暮らそう。」

しかし、妻にはすぐに返事が出来るほど、簡単な問題では有りませんでした。

「他の生き物を見てみろ。
子孫を残し、子孫を育てる事が最大の目的で、その為だけに生きているものも多い。
鮭もそうだ。子孫を残す為にぼろぼろになりながら激流を登り、子孫を残すと死んで行く。
私の人生もそれでいいと思っている。
ご主人に怨まれようと、妻や子供達に軽蔑されようと、世間に非難されようと、理香ちゃんさえ立派に育てる事が出来ればそれでいい。
私の幸せなどどうでもいい。智子はどうだ?」

その後、妻は一言も話さずに帰っていったそうですが、何も話さず、何も反論せずに帰った事で、妻を自分のものに出来ると確信したそうです。

稲垣は、妻が決心してくれるという自信は有ったのですが、最低でも2、3日は掛かると思っていたそうです。
しかし、稲垣にとっては嬉しい誤算で、妻は翌日の昼過ぎにはアパートに来て、部屋の入り口に立ったまま。
「理香の寝顔を見ながら、一晩よく考えました。」

「決心してくれたのだな?」

妻は、涙を流しながら、ゆっくりと頷いたそうです。
稲垣は妻を抱き締め、そのままベッドまで連れて行き、キスをしながら胸を触りました。

「やめて下さい。そんな事はやめて下さい。」

「どうしてだ?これから周囲の者は全て敵になる。
夫婦だけでも仲良くしていなくてどうする?
父親と母親が仲良くしなくて、理香ちゃんが幸せになれるのか?
これは私達だけの為では無い。
理香ちゃんの為でも有るのだ。」

「でもまだ私達は・・・・・・・・・・。」

「ああ。ご主人や私の家族に話すのは、ご主人が帰国して落ち着いてからになる。
理香ちゃんに話すのはもっと後だ。
でも、今迄兄妹の様に思っていた関係が、急に夫婦の関係にはなれない。
だからそれまでに、夫婦としてやって行ける様になりたい。
夫婦にとってセックスは大事な位置を占める。
それに、2人で皆を説得しなければならなくなるから、それまでに夫婦としての絆を強くしておきたい。
2人で力を合わせないと、理香ちゃんを幸せには出来ない。
分かるな?」

この日、稲垣と妻は2度目の関係をもち、その後何度も何度も、絆を深め合ったのでした。
この間、奥さんは話を聞きながら、ずっと声を殺して泣いていたのですが、急に顔を上げて、
「どうやって智子さんを抱いたの?どんなセックスをしていたの?」

そう言ってから奥さんは私の顔を見て、恥ずかしそうに慌てて俯いてしまいました。
私もその事が気になっていて、女で有る奥さんも同じ思いだと知り、少し安心したのですが、妻からは聞けても稲垣から聞くのは耐えられず、プライドも許しません。

「・・・・・普通に・・・・・・。」

「普通?少し待っていろ。」

私が稲垣からプレゼントされた妻の下着を取りに行くと、妻は眠っているようでした。
座敷に戻った私は、稲垣の前に卑猥な下着を放り出すと、その中から真っ赤なパンティーを手に持ち、大事な部分に空いている穴から指を出し、

「こんな物を穿かせておいて、普通にだと?おまえには何が普通なんだ?」

「いえ、すみません。以前からこの様な下着を身に着けた女性を、目の前で見てみたいと思っていましたが、妻に頼む訳にも行かず・・・・・。」

「私は知っていました。あなたにその様な趣味が有るのは知っていました。
あなたの書斎に隠してあった嫌らしいビデオは、ほとんどの女性がその様な下着を着けている物だったし、
その他にも、その様な下着のカタログや、インターネットからプリントアウトした、写真なんかも隠して有るのを知っていました。」

「それにしても、智子がこの様な物を素直に身に着けたとは思えない。
ましてや、あの様な格好で人前に出るなど考えられない。
また何か騙して穿かせたのか?」

「お聞きになったかも知れませんが、9年前と同じ様に・・・・・・・・・。」

初めの頃は、セックスの前には、必ず拒むような言葉を言い、行為中も時々拒む素振りを見せていた妻も、3ヶ月もするとその様な言葉も消えて、セックスを積極的に楽しんでいるかの様に見えました。

稲垣は、もうそろそろ色々な事をさせても大丈夫だと思い、妻が一度気を遣って快感の余韻に浸っている間に、通販で買っておいた下着を持って来て、自らの手で穿かそうとしたのですが、異変に気付いた妻の激しい抵抗に合ってしまい、仕方なく断念しました。

しかし、諦め切れない稲垣は9年前を思い出し、その時と同じ様に、今迄散々抱いたにも関わらず、どうしてもセックスの対象としては見られないと嘘をつき、
夫婦として上手くやって行くには、セックスの時だけは違った女になって欲しいと頼み、
最初は比較的大人しい物から身に着けさせて徐々に妻を慣らし、
徐々に過激な下着を身に着けさせていきました。

「それにしても、自分で楽しむだけでなく、どうして人前でもあの様な恥ずかしい格好をさせた?」

「それは・・・・・・・。」

「それは何だ?」

数ヶ月前から、妻の様子がおかしいと気付いたそうです。
それは、私がいつ戻ってきてもおかしくない時期になり、妻がまた迷い出したのだと思い、もう昔の妻では無いと分からせる為に、銀行に来る時以外はあの様な格好を強要したのです。

もう私の妻では無く、稲垣のものだと分からせる為に、脅したり宥めたりしながら説得して、あの様な格好をさせたそうです。

稲垣の話を聞いていて、妻の陰毛があの様な形に剃られていたのも、同じ理由だと思い、
「あそこの毛を剃ったのも同じ理由か?」

「はい。
最初は化粧や髪型、髪の色も変えさせ、あの様な格好をさせるだけで効果が有ると思っていましたが、
それらはどれも、ご主人が帰って来る前に直そうと思えば、直せる物ばかりだと気付きました。
髪も切って染め直せば良いし、化粧はすぐにでも直せます。
服や下着も捨てれば良い。それで不安になって。」

「智子は素直に剃らせたのか?」

「・・・・・・・・・・・・。」

「言わなくても、後で智子に聞けば分かる事だ。
今おまえから聞くのと、後で智子から聞くのでは、俺の怒りも違う。
話せない事は話さなくてもいい。おまえが決めろ。」

「最初はホテルで身動き出来ないように縛り、嫌がる智子さんを無視して・・・・・・・・・・すみませんでした。」

『最初は』と言う事は1度だけで無く、何度かその様な行為をされたという事です。
その時の妻の姿を想像すると不憫だと思いましたが、私を裏切っていた事とは別問題で、妻を許す事など到底出来ません。
セックスの本当の良さを覚えてしまっていた、妻の身体では仕方の無い事かも知れませんが、積極的に快感を得ようとしている姿を想像すると、妻が本当に騙されていたとしても、許す気になどなれません。

気持ちと身体は違うと思いたいのですが、妻が上になり下になり、ある時は、後ろからも突かれ、自らも腰を使っている姿を想像するだけで、許す気にはなれません。

「あの様な格好をさせて、この事が発覚しても良いと思っていたのか?
現にお袋が妻の異変に気付いた。
それに、毛を剃ってしまっては私が帰って来たらばれる恐れが有っただろ?」

「最初の頃は知られる事が1番怖かったです。
いいえ、ずっと怖かった。
でも、それ以上に智子さんが離れて行く事の方が怖く、その時はその時でどうにかなると思いました。」

あの計算高い稲垣が、妻が離れて行くかも知れないと思った時、感情だけで動きました。
この事からも、やはり今は奥さんの手前言っているだけで、本当は妻の事を今でも愛していて、まだ諦めてはいないのでは無いかと疑ってしまいます。
今はじっと台風が通り過ぎるのを待っているだけで、まだ諦め切れていないのでは無いかと疑ってしまいます。
そう思うと、益々妻とは離婚出来ません。

妻があの様な状態になったのは、長年信じていた稲垣に裏切られていたと、知った事からだと想像はつきますが、この男なら、私達を欺いて少しでも穏便に済ます事が出切る様に嘘をついたとでも言い、また妻に取り入る事は容易い事でしょう。

妻に対する未練や情も有るのですがそれ以上に、誰に何と言われようとも、妻とこの男が自由になり、幸せになる事だけは我慢出来ないのです。
稲垣は勿論ですが、もしも別れる様な事になれば、妻にも幸せにはなって欲しくないのです。
一生後悔して、苦しんで欲しいのです。
私は、そんな、くだらない男なのです。

妻があの様な状態になって寝ている事自体、妻の身勝手な甘えだと思えてきて起こしに行ったのですが、妻はベッドに寝て壁を見たまま、私を目で追う事もしません。

「おまえも座敷に来い。おまえからも聞きたい事は山ほど有る。」

やはり妻は、私の存在など気付いていないような様子で、一人言の様に呟きました。

「彼も同じだった。父や義兄と同じだった。」

そう言うとまた目を閉じて眠ってしまい、このままでは妻が壊れてしまうと感じたのですが、私にはどうする事も出来ません。


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kage


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